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『手紙は憶えている』ナチ戦犯を認知症の老人が追い詰める!よみがえるアウシュビッツの記憶:動画配信・映画感想あらすじ考察

映画『手紙は憶えている』は2015年のカナダ・ドイツ映画!アウシュビッツのホロコーストを生き残った認知症の老人ゼヴが妻の死をきっかけに最後の冒険、ナチ戦犯を追う!クリストファー・プラマーを主演に記憶を辿っていく老人の演技が秀逸

theじ~ちゃん映画

なのですが、中身はかなり濃厚でかつ奥が深いテーマを扱います。

ナチのアウシュビッツでのホロコーストを題材に、アメリカの老人ホームで出会った二人の老人が人生の締めくくりにナチの戦犯を追い断罪することを画策します

この老人を二人のオスカー俳優

クリストファー・プラマーとマーティン・ランドーが演じます、単なる老人達の映画と侮るなかれ、演技力に裏打ちされた違和感のない映画全体の流れが秀逸です

本作は派手なアクションはないし、胸をすくような爽快感もない

どちらかと言うとホロコーストを時折思い起こすような、記憶を奥底から引き釣り出す描写が目立ちます。

かなり、お勧めの一本で

隠れた名作ではないかと思う

☆5のおすすめ(5点満点)

感想中心となります

それでは見ていきましょう

あらすじ ネタバレなし

90歳を迎えたゼヴはアメリカの老人ホームで暮らしていた。

妻ルースを呼ぶが返事がない、二人して老人ホームで暮らしているはずなのに存在を探す。職員にルースの所在を聞いてみると「1週間前に亡くなった」とのこと、ゼヴは認知症を患っていた。

老人ホームの仲間の事も忘れがちなゼヴは、ホームの車椅子生活の動けない老人マックスからルースが死んだ後に行動を起こすと約束していた、ある行動に出ることにする。

それは、
家族を殺されたアウシュビッツ生き残りの二人だけが知る戦犯、ルディ・コランダーという偽名を名乗っている人物を探すことだマックスによると4人にまで絞り込まれている。

ゼヴは最後の旅にでた。それは認知症を患っているゼヴが足の悪いマックスの綿密な手紙に従い、4人を探し顔を確認して復讐することだった・・・

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映画情報&キャスト

『手紙は憶えている』 2015年 カナダ・ドイツ
【原題】remember

【監督】アトム・エゴヤン
【脚本】ベンジャミン・オーガスト
【出演者】
ゼヴ(クリストファー・プラマー)
 :90歳の認知症を患った老人、アウシュビッツの生き残り
マックス(マーティン・ランドー)
 :老人ホームでゼヴと出会いアウシュビッツの復讐を誓う、足が悪い
ルディ・コランダー(ブルーノ・ガンツ)
ルディ・コランダー(ユルゲン・プロホノフ)
ルディ・コランダー(ハインツ・リーフェン)
チャールズ(ヘンリー・ツェニー)
 :ゼヴの息子
ジョン・コランダー(ディーン・ノリス)
 :ナチ信泰者

超感想中心の評価考察・レビュー

アトム・エゴヤンの隠れた秀逸作品

社会問題や歴史問題を得意とすると、アトム・エゴヤンの渾身の一本とならしめるか!

アトム・エゴヤン作品は日本では未公開やスルーされることが多く、なかなか馴染みが薄い作品が多いと思う、そんな中でも、近年では商業マーケットに寄り添ったかのような映画の作風になりちょっと批評も多いような気がします。

それでも本作は、その際にいる作品で、ホロコーストを痛烈に批判しつつも商業的な部分も意識したエンターテイメント作品として十二分に成り立つと思う逸品です!ただ何故か日本ではあまり話題にはならないのが残念なところ

随所にみられる、ナチのホロコーストを思わせるような映像や演出、ストーリーの展開性はお見事の一言です

老人が主体の映画ですが、本作はアクションや一般的なミステリーとは違う、ドキドキ感を味わえて歴史の裁判官や断罪者になっているかのような気持ち面持ちを持たせてくれます

ラストのネタバレは、してしまうと面白くないので今回はしません

といっても、色々なところに伏線的なものはちりばめられていますが、本作は序盤でラストまでのストーリーがわかってしまったとしても、何も知らないふりして気持ちよく騙されて、最後まで見ましょう

そうしないとダメな映画です

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ポニーキャニオン

クリストファー・プラマー:最年長アカデミー俳優

クリストファー・プラマー主演と言うから、見ごたえ抜群なのは間違いなし

鋭い眼光で、高圧的な態度で金持ちで

過去の名作やキャリアから、そんな印象を抱いてしまう、クリストファー・プラマーですが、本作では全く違います。

認知症を患った90歳の老人役!

これが、凄い、目力が無く中を漂う目線とプルプル感、これが演技なのか?と思うばかりの行動の一つ一つがすごい、どんどんいたたまれない痛ましい気持ちになっていきます。

頑張れ!

って声をかけたくなる。

それでも、ナチ戦犯を追う時の時折見せる、狼のような目線

これが全てを物語っています。

クリストファー・プラマーは、『人生はビギナーズ』で見事にアカデミー助演男優賞を獲得した最年長のアカデミー俳優としても有名です。

記憶に新しいところでは、『ナイブスアウト/名探偵と刃の館の秘密』、『ゲティ家の身代金』での大富豪役なんかが目に焼き付いていますよね。

まだまだ、これから活躍してほしいものです

脇を固める名優たち

本作では、往年の名優たちが脇を固めます

まあ、老人が主格の映画なので、名優たちになりがちなんだろうけど、それでも結構いい感じのキャスティングなので映画のクオリティも間違いなし

マックス役のマーティン・ランドーは『エド・ウッド』でアカデミー賞助演男優賞を獲得しています

ドイツを中心に活躍している、ブルーノ・ガンツ『ヒトラー 〜最期の12日間〜』、『悪の法則』等に出演しています、なんか皮肉さを感じます

シュワルツェネッガーと因縁の深いユルゲン・プロホノフなど

ホロコーストのメタファー的な演出

注目してもらいたいのが、ホロコーストを連想する演出

ゼヴが記憶を辿り、思い出したり、手紙を見返して、時折起こるフラッシュバックにもならない偶発的な映像の積み重ね

これが、本作を物語って、皮肉って、戦争やホロコースト全体へのメタファーとなっています。

意図的な、フラッシュバックのような映画的な作りではなく、何気ない風景や、しぐさ、小道具などがいちいちホロコーストを想起させます。

この辺は、明示的な明らかに作っている構成ではなくて、刷り込むかのように入ってきます。個人的には、この構図とカット、カメラからの視点が好きです。

っていうより感動しました

そして、ゼヴが戦争犯罪人を探すのに認知症を患った状態で街をふらつくたびに、町の人々は親切でした。

この親切ないろいろな人の行動や思いが現代社会を形どり、それと相反するアウシュビッツでの想い

そして、既に亡くなっていましたがナチ信泰者の息子を、偶発的に殺してしまうところにも、戦争に対する憤りを感じることができます。

併せて読みたい『オペレーション・フィナーレ』

映画の感想まとめ

本作は、何も考えずに

ストレートに素直な気持ちで見ましょう。

それが、吉です

純粋な気持ちで見ると、本作品は本当に名作でありサスペンス性も味わえます。

アクションなどを期待したりしてもダメです、その逆でゆったりした演技の一つ一つや言葉のやり取りに注意してみてほしい作品です

私は、かなり高評価です

ぜひ見てほしい作品