『復活の日』イタリア風邪から始まったパンデミックの先、残された900名足らずの人類は何処に行くのか:動画配信・映画感想あらすじ考察
映画『復活の日』は小松左京の同名小説から広大なスケールで人類の存亡を描く!それはインフルのような風邪として、イタリア風邪から始まった、その殺人的な感染力で45億の人類はウイルスの世界的な感染で滅亡した!生き残ることが出来たのは南極に派遣されている各国の探検隊員、女性を含み900名弱のみ。人類は存続をかけた想像を絶する困難に打ち勝つことが出来るのか。
1980年 日本の角川映画2018年のウイルス感染を扱ったパンデミック、ディズアスター映画です。
本映画のスケールの大きさは古い映画ながら圧倒されます。
逆に、古い映画なのにここまで。といった感じですね、しかも日本映画です。
昔の日本映画はパワーありましたよね。
本作は、構成・内容共におすすめ出来る作品です!
日本映画界からは、草刈正雄など今でこそ、朝ドラのおじいちゃんや大河では真田幸村の父親など大御所感満々ですが、当時は超イケメンの細っこい、青年です。
特に昨今の、世界がコモディティ化している世界では、本作品の扱うウイルス感染やパンデミックなどは絵空事では無いので、見ていておそろしくなります。
そういう意味でも、今改めて見ても、面白かったです。
少なくともバッドエンドではないです。
そう信じたい超希望を抱く作品です
それでは、以下見ていきましょう
あらすじ ネタバレあり
1982年、人類はウイルスMM-88に絶滅させられた!
見た目は風邪・インフルエンザの症状に似ている、そのウイルスはイタリア風邪として動物までも巻き込んでスペイン風邪になぞらえて世界に広まっていった。
始まりは、米ソ冷戦のさなかアメリカ軍のウイルス研究所から盗み出されたウイルスが東側ドイツで密売人の手に渡るが、移動中にアルプス上空で飛行機事故に遭い、ウイルスが拡散してしまったのだ。
ウイルスの致死性・猛毒性は強く、風邪や・インフルエンザに擬態しながらも、マイナス10度より高い温度になると爆発的に増殖する特性も持っていた。
もはや、イタリアだけで無く、わずか数ヶ月で世界各国は壊滅状態となっていた。
生き残ったのは、900名弱の各国が派遣している南極探検隊の人々と、わずかばかりの潜水艦搭乗員のみ。
南極の中で小さな委員会を構成し人類を存続させるために話し合いや運営を続けるが、そこには過酷な現実も待っていた。女性隊員はわずか8名、人類の存続のためには人権や愛を無視した、人類繁栄の為の行動を取るしか無くなっていた。
そんな中、アメリカのワシントンを襲う大きな地震を日本の地震学者である吉住が予測した。
南極には直接影響はないものの、アメリカは大きな核爆弾のような振動を受けると、ARS(全自動報復システム)が作動して、核の報復攻撃を世界中に行うことになっており、ソ連も同様の措置がされている。
ソ連のミサイルで報復の範囲には南極も入いっていたのだ。
アメリカ軍カーター少佐と、吉住はARSの作動を停止するために、潜水艦でアメリカに上陸する。ウイルス研究の成果からワクチンを接種しての強行だ。
無事軍司令部まで達するも、地震の発生には間に合わずカーター少佐は死亡し、世界的な核の報復合戦となっていた。
数年後、南極から砕氷船で無事脱出することに成功していた数十名の人類は、最南米の極寒地帯で人数を減らしながらもわずかばかりの命を保っていた。
そこに、アメリカから南米を横断してきた吉住がボロボロの格好で現れ、人類は命の息吹をかすかに灯した・・
映画情報&キャスト
『復活の日』 1980年 日本
【国外タイトル】Virus
【監督】深作欣二
【脚本】高田宏治
グレゴリー・ナップ
【原作】小松左京
【製作】角川春樹
【音楽】テオ・マセロ
羽田健太郎
【主題歌】ジャニス・イアン 「You are love」
【撮影】木村大作
【編集】鈴木晄
【出演者】
吉住(草刈正雄)
:日本南極探検隊
地震学者
則子(多岐川裕美)
:看護婦 吉住の妻
妊娠している
中西隊長(夏木勲)
:日本南極探検隊 隊長
辰野(渡瀬恒彦)
山内(千葉真一)
:日本南極探検隊 隊員
カーター少佐(ボー・スヴェンソン)
:アメリカ軍少佐
マリト(オリヴィア・ハッセー)
:南極ノルウェイ隊
リチャードソン大統領(グレン・フォード)
:アメリカ大統領
マクラウド艦長(チャック・コナーズ)
:潜水艦艦長
コンウェイ提督(ジョージ・ケネディ)
:南極アメリカ隊
映画感想・評価
角川映画の魂がこもっている作品
本映画は、同名で小松左京の長編小説として既に1960年代に執筆刊行されています。古くから、映画化の話も出ていたようですが中々折り合わず、1975年に角川がハヤカワより権利を購入して角川から再刊することから始まります。
角川春樹氏は、早くから『復活の日』を映画化するために、角川映画を立ち上げたと言っていたようで、それぐらい本作品に入れ込んでいます。
監督も当時はヤクザ映画を撮らせると右に出る人はいない深作欣二監督を起用抜擢!
本作品に新しいエンターテイメント性とリアリティーさを盛り込もうとしています。
壮大な構想と巨額の制作費
当時では破格の20億とも30億とも言われいます。1980年代での映画製作を考えると、日本映画でそこまでお金をかけることそのものが凄い事です。
想いが違いすぎます
キャスト・俳優陣を見ても、日本ではトップの俳優達が出そろっています。
南極ロケ撮影、潜水艦のチャーター、砕氷船、膨大なエキストラ、世界中の被災の様子など、とにかくお金のかかる膨大な量とスケールの撮影を行っています。
世界中を飛び回って撮影したことが逸話として残っています。
今でこそ世界中を飛行機で飛び回ることが感嘆ですが当時の航空インフラ事情や港湾事情を考えると、本当に大変なことだと思います。
世界で生き残ること、その人達のドラマですから、劇中はほぼ80%位は英語です。
日本での撮影以外は、ほぼ英語と思った方が良いです。
合わせて読みたい現代のパンデミック『コンティジョン』
秀逸な映画ストーリーと目の付け所
とにかくスケールに圧倒されますが、原作で言うと2020年時点で既に50年以上前の作品で、映画においても40年前の作品です。
古い作品なので仕方ないですが、”演劇”と映像全体的には、野暮ったいですが、これはしょうがないです。
そんなところでは無くて、原作のスケール感をそのまま伝えているところが凄いです。
もちろん原作の良さがあってのことですが、
原作よりも酷い状況(世界の混沌ぶりを)にしているところもあり、映画化でスケールダウンや妥協していない感じが凄いです。
この作品を現代の技術で撮影リメイクしたら、かなりの名作になること間違い無しだと思います。
物語全体が、極端な味付けと小さな矮小な事柄、そしてまた大きな事柄と入り乱れさせることによって、映画全体にメリハリがあります。
- 吉住と則子の小さな個人レベルでの愛 子供が出来た出来ないとか
- 誰もが逃れられない災厄(世界、動物、子供から老人まで)
- 人類が生み出したウイルスへの警鐘
- 人類への愛
- 核により2回の滅亡(南極)
- 核による浄化
これらの要素が巧妙に絡み合って、物語を構成します。
さらには、吉住とマリトの愛も泣かされました。
イケメンの草刈正雄も今も昔も、かっこよすぎます。NHK大河で真田の大将の胡散臭さと違って、めっちゃフレッシュです。
原作との違いは
細かいところでいくつか違ったりしています。
- 南極で生き残る人数 原作:1万人 映画:900人弱
- ウイルスの発生源 原作:イギリス 映画:アメリカ
- 地震発生源 原作:アラスカ 映画:ワシントン
- ウイルスの死滅 原作:核攻撃で中和 映画:明文化なし
良い意味で、デフォルメされていると思います。
仮に1万人生き残っていると言われると、スケールダウンに見えなくもないです
どんなに凶暴なウイルスでも、100%致死率ってのはないはずで、ウイルス自身が生き残ることが出来なくなるような致死率はウイルス学としてはありえないと何かの本で読みました。
そう考えると、1万人のほうがしっくりきますが、映画映像化では千人足らずってのはいい感じのインパクトを与えてくれます。
現代社会への警鐘か小松左京はエスパイかイタリア風邪描写
本作品の原作から、もの凄く現在に酷似して空恐ろしくなる箇所合ったので、紹介です
混みあわない、ゆったりした車内にもかかわらず、乗客の顔はどれも突き詰めた不安な表情でいろどられていた。
車内をみわたせば花びらのように白いマスクが点々と見え、人々はあらためて、このガラガラにすいたラッシュアワーの上り電車の中でうそ寒い感じにおそわれるのだった。
:
厚生省の手元に来ている非公開データでは日本の患者がすでに3000万人達しようとしていた。最初に日本に上陸してからまだ二か月しかたっていない。にもかかわらず。:
「今まで何回も体験したインフルエンザの流行と、どこかちがった現象が、流行相にあらわれている」
小松左京 『復活の日』 ハルキ文庫 3章より
すごい洞察力です。
小松左京氏のSFは目を見張るモノがあります。そしてだいたいどの作品も、本当の全滅やバッドエンディングではなく、希望を残す終わり方はとても共感がもてます。
『エスパイ』『日本沈没』など、本当に日本を代表するSF作家で、スケールの大きさは後の小説作家にも間違いなく影響を与えています。
海外の評価 2020/03時点
さすがに古すぎて、批評家からは評価がついていないですね。トマトにもありませんでした。
IMDbでは、そこそこ評価されています。
Metascore (批評家) | – |
User rating | 6.2/10 |
TOMATOMETTER (批評家) | – |
Audience | – |
映画の感想まとめ
並外れたスケールの大きさ、それは映画でも、その着眼点や構想についてもそうです。
原作の質もよく、映画人達がそれを大きなスケール感を持って映像・映画化してくれたかなりのおすすめです。
残念ながら、海外ではあまりはやらなかったようです。理由はよくわかりませんが、マイケルクライトン原作の『アンドロメダ病原体』等が既にあったために、新規性が薄かったのかもしれませんね。
また、内容的に全く子供受けしないので、その辺が原因かもしれません。
映画としてだけで無く、人類に対してのある意味警鐘であると捉えると、ぐっと面白くなります。
心を落ち着けて、スケールの大きな作品を見たい人に最適です。
独善的評価[5段階]としては
映像・音楽 5
キャスト 4
ストーリー構成 5
初見で読み取れない謎 4
合わせて読みたい『ウイルス感染・パンデミックのリアルな映画おすすめ』
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