『眺めのいい部屋』クラシックの調べにイギリス階級社会と愛の物語!アカデミー賞席巻:動画配信・映画感想あらすじ考察
映画『眺めのいい部屋』は20世紀初頭のイギリスとイタリアが舞台のロマンチック映画。良家の令嬢ルーシーは当時のイギリスの階級制度に従い女性として慎ましく同じ階級の男性と結婚するはずが、イタリアのフィレンツェ旅行でルーシーの心に小さな変化が起きる
20世紀の名作映画のひとつに挙げられる『眺めのいい部屋』は、
巨匠ジェームズ・アイヴォリー監督が文豪E・M・フォースター作の同名小説(1908年)を原作のテイストを損なうことなく見事に映像化させ、本国イギリスだけでなく世界的に評価を得ています
アカデミー賞にも驚きの8部門ノミネート3部門受賞 脚色賞、衣装賞、美術賞
この映画を見たらきっと、フィレンツェに行ってみたくなるはず!
多少古めかしい内容ですが、少女漫画テイストもあり、
現代でも共感できるロマンチックな物語に仕上がっています
”ほげる”的には、
間違いなくおすすめの作品です
☆4のおすすめ(5点満点)
それでは見ていきましょう
あらすじ ネタバレあり
1907年。イギリス階級社会の上位に属している令嬢のルーシーは、年の離れた独身の従姉シャーロットの付き添いでイタリアのフィレンツェを訪れる。宿の部屋からは美しいフィレンツェの街が堪能できると思いきや、話と違って眺めは期待外れ
超激怒状態のシャーロットに、同宿のエマソンは好意から自身の眺めのいい部屋と交換しようと提案がありシャーロットは自分たちと違う労働階級のエマソンに眉をひそめるものの、ルーシーはエマソンと息子ジョージには嫌悪感を抱いてはいない模様。結局シャーロットは、その提案を受入れ眺めのいい部屋に移ることになる
フィレンツェの街を一人観光中にルーシーは、地元青年たちの流血沙汰の喧嘩を見て気絶してしまうが、偶然通りがかったジョージに助けられる。気絶してしまいバツの悪いルーシーと、ジョージとの間に何かが芽生え始めた別の日、ルーシーは同宿の客たちとピクニックに出かけ、ジョージも一緒で何となく気まずい雰囲気。
退屈なルーシーは皆から離れ佇んでいた所、突如駆け寄ってきたジョージに情熱的なキスをされる。始まりかけた二人の恋は、その現場を目撃したシャーロットの介入で強制終了となり、ルーシーはこの出来事を他言無用とされ、早々にイギリスに帰国させられる
ルーシーは理想的な上流階級セシルからのプロポーズを受け婚約する。ジョージを忘れたはずのルーシーだがセシルとの味気ないキスによりジョージとのキスの記憶が蘇る。
セシルは悪人ではないがルーシーの心はどこか物足りない。
そんな中、ルーシーはセシルが初対面のエマソン親子に近所の空き家を紹介したことを知る。ジョージが引っ越しくることで騒めく心をひた隠しにするルーシー
弟フレディはジョージのことをいたく気に入っており複雑な心境、表面上は平静を装っているルーシーとジョージは、フィレンツェで同宿だった小説家ラヴィッシュの本に他言無用だったはずの二人のキスの場面を参考にしたと思われる一文があることを知ってしまう
シャーロットは、ラヴィッシュに二人の出来事を話していたのだ。それがきっかけでジョージは再びルーシーに対する愛情をストレートに伝えるが、ルーシーは混乱し拒絶する。
去ったジョージに悲観に暮れるルーシーは自分の気持ちに正直になる事を決め、セシルとの婚約を破棄する。ルーシーを真に理解していなかったセシルは、落胆することなく紳士らしく立ち去っていく。
ルーシーはエマソン宅を訪れます。先走った愛の告白でルーシーに迷惑をかけてしまったことを反省したジョージはここを去り、エマソンも引越し準備をしている。ショックを受け泣くばかりのルーシーは、エマソンと話している内にジョージを愛していることを認める。ルーシーとジョージは、二人の出会いの場となったフィレンツェの宿に訪れる。自分たちだけの眺めのいい部屋を見つけた二人は、部屋の眺めに文句を言っている客にルーシーとシャーロットを重ね苦笑するのだった。
映画情報&キャスト
『眺めのいい部屋』 1986年 イギリス
【原題】A Room with a View
【監督】ジェイムズ・アイヴォリー
【脚本】ルース・プラワー・ジャブヴァーラ
【原作】E.M.フォースター
【出演者】
ルーシー・ハニーチャーチ(ヘレナ・ボナム=カーター)
:従姉シャーロットの付き添いでフィレンツェを訪れた礼儀正しい令嬢。ピアノが趣味。
ジョージ・エマソン(ジュリアン・サンズ)
:父と共にルーシーと同じ宿に泊まっている青年。外見はイケメンだが、心の内は何を考えているのわからない。
セシル・ヴァイス(ダニエル・デイ=ルイス)
:ルーシーの婚約者。良くも悪くマイペースな紳士。
シャーロット・バートレット(マギー・スミス)
:ルーシーの従姉。ルーシーとはかなり年の離れていることから、旅先のフィレンツェで何かとルーシーの世話を焼く。
エマソン氏(デンホルム・エリオット)
:温厚なジョージの父。内向的な傾向がある息子ジョージを心配している。
エリナー・ラヴィッシュ(ジュディ・デンチ)
:ルーシーと同じ宿に泊まっている自由気質な大衆向けの小説家。
ビーブ牧師(サイモン・カロウ)
:ルーシーが住んでいる地区の牧師。明るく人当たりの良い人物。
フレディ・ハニーチャーチ(ルパート・グレイヴス)
:愛嬌のあるルーシーの弟。姉ルーシーの婚約者セシルが好きではないようだ。
超感想中心の評価考察・レビュー
イギリス・フィレンツェ時代背景の設定
14世紀イタリアから広まった芸術ムーブメントであるルネサンス
そのルネサンスとは、「再生」を意味し、古代ギリシア・ローマ時代のように人間らしさを追求していったかのようで、そのルネサンス文化の発祥の地イタリアのフィレンツェの旅によって
イギリスの階級社会で育った良家のルーシーは、心が騒めいていくという展開は説得力がある
イギリスでは、産業革命後に特に三階級モデルという考え方・風説が定着しました。
上流階級(貴族階級)、中流階級(中産階級)、下層階級(労働者階級)と、この3モデルに定義されていたようです
恋に落ちるルーシーとジョージ A Room with a View
映画の冒頭でビーフ牧師はピアノを弾くルーシーに、
「ピアノに傾ける情熱を人生に向けたら、素晴らしい人生をおくることができる」と言います
ルーシーはイマイチ理解していないようです。
優等生タイプの令嬢ルーシーは、若さに満ち溢れた可愛らしい女性で、ジョージは職に就き真面目な人生を送っている青年のようですが、心の内は父親が心配するほど明後日の方向を向いています
しかし、ドラブルに巻き込まれたルーシーを助けたことによって、
それまでのジョージの灰色の世界が色づいた世界へと変貌していったかのようです。
きっと、ビーフ牧師が指摘していたルーシーの情熱にジョージも気づき惹かれていったのでしょう!
悩めるルーシー ヘレナ・ボナム・カーターの名演
ジョージのルーシーへの愛は直球なので、『ロミオとジュリエット』のような話だったら、二人は駆け落ちしてしまいそうです。
二人の恋の第1ラウンドは、シャーロット介入により当時の貞操観念に従って強制終了となっています
第2ラウンドでは常識系ルーシーと情熱系ジョージのガチンコ対決となりますが、ルーシーはジョージを拒否できるほど婚約者セシルを愛していないので困ってしまいます
ルーシーとジョージの恋は『ロミオとジュリエット』のドラマチックさはないものの、人生経験の浅い若いルーシーにとっては一大事となっています。演じるヘレナ・ボナム・カーターはクラシカルな雰囲気を漂わせていますが、初めての人生の岐路にぶち当たったルーシーを自然体に演じています
ヘレナ・ボナム・カーターは、若い時にはこんなにもかわいらしく、イギリスのtheお嬢さんって感じの雰囲気が合う女性でしが、『ハリー・ポッター』シリーズで、あばずれのようなベラトリックス・レストレンジを演じているとは・・・
『ファイトクラブ』でもマーラーという薬中の女性を演じています、いやはや本当に演技が切れています。幅が広い!『チャーリーとチョコレート工場』でも、バケット夫人というキャラクターの強い女性を演じています。とんでもない演技力
ルーシーの婚約者セシル
セシルは名優ダニエル・デイ・ルイスの名演により、イギリスの階級制度が詳しくなくても生粋の上流階級の紳士だと理解することできます。ルーシーは上流階級の令嬢と思っていたのですが、正確には中産階級の令嬢です。セシルよりは下の階級となりますが、社会の上層部に属していると言えるでしょう。
この微妙な階級差も、あがなえない社会的な身分の差を浮き彫りに演出しています
どことなく自由な雰囲気があるルーシーの家族は新たなステージに突入した20世紀に順応しようとしているのですが、中世の貴族のようなセシルはちょっと出遅れ感があるようです。セシルは悪い人ではないのですが、ルーシーにとっては物足りなかったのかもしれません。
出番は少ないけど、ルーシーの可愛い弟君フレディ
メインだけでなくサブも豪華すぎる俳優が出演している『眺めのいい部屋』。その中で推しなのが、生意気なことを言っても許してしまいそうになるルーシーの弟フレディ
演じるルパート・グレイヴスがベネディクト・カンバーバッチを世界的にブレイクさせた英国ドラマ『SHERLOCK』でレストレード警部役で出演しているのを発見して驚きました。イケおじになったもののフレディを演じた頃の可愛さを漂わせています。
身分違いの恋の行方 ネタバレ <ラストとその後>
ラストで幸せいっぱいの二人は、思い出の地・イタリアのフィレンツェを訪れます。現代ならともかく20世紀初頭に独身の男女が旅行するのは常識に反しているので、二人は結婚しているのでしょう。しかし、原作でも小説でも結婚式の場面が描かれていないので、身分違いの二人の結婚に対しひと悶着あったのかもしれません。
身分違いの恋と言えば“令嬢と貧乏系の芸術家”が定番ですが、ジョージは鉄道関係の仕事に就いていることから贅沢は出来ないものの生活には困らなかったのではと推測します。
おとぎ話のようなハッピーエンドを迎えたルーシーとジョージは後日談的なエッセイ『部屋のない眺め』よると、二度の世界大戦という難局を二人は乗り越え共に人生を歩んでいったようです。
違う価値観との人たちの交流を題材するE・M・フォースター作品において、『眺めのいい部屋』のルーシーをジョージは身分の違いを乗り超える逞しさがあったようです。
イギリス名優勢ぞろい ハリー・ポッターにも通ずる!
本作は、イギリスの名優たちで固められた作品と言えましょう
先にも紹介したように、ヘレナ・ボナム=カーターはハリーポッターのベラトリックス・レストレンジでとんでもない悪役を演じています。
ハリーポッターに出演していたのは、ヘレナだけではなかったのです
なんと、シャーロット役は、ハリーポッターでマクゴナガル先生役だった、マギー・スミス!
敵味方が一緒に従姉妹どうしたったんですねー
さらには、ダニエル・デイ・ルイス
そして『007』シリーズのM役のジュディ・デンチ! が小説家役で登場しました
エマソン氏役のデンホルム・エリオットも、『インディ・ジョーンズ』のマーカスで馴染みの名優ですね
映画音楽とヴェートーベン・モーツァルトの奏で
劇中に流れる音楽もイギリスの上品な世界観を作るのに欠かせないものになっていた
オペラをつなぐことによって、ルーシーの気持ちの変化や
”想い”を表現している。最初のピクニックのシーンではプッチーニのオペラ『つばめ』が使われ
サントラCDも楽しませてくれる
また、さり気なく流れる音楽としてヴェートーベンやモーツァルトのピアノソナタが使われており、心を洗われるように綺麗にしあがってます。
映画の感想まとめ
最初に『眺めのいい部屋』には少女漫画テイストがあると書きましたが、かみ砕いて言うなら70〜80年代のヨーロッパを舞台にした時代物の少女漫画が好きな方にはお勧めの映画だと思います。
ハリウッドの大作映画のような目を見張るような豪華さはありませんが、
日本では80〜90年代ミニシアター・ブームに乗ってヒットしたようです。
いずれにしても、見て欲しい
おすすめの名作、アカデミー賞映画です。
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