映画感想『ユリゴコロ』ストーリー展開が秀逸すぎる!あふれ出る殺人衝動をもつ女性と周囲の数奇な人間関係

2020-08-17

映画『ユリゴコロ』は主演の吉高由里子が日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞し、原作が”沼田まほかる”の同名のミステリー小説!亮介は自分の経営するレストランの経営が軌道に乗り始めた頃、パートナーだった千絵が突然失踪し父親の末期ガンを知った。父親のいる実家に顔を出すようになり、「ユリゴコロ」と書かれたノートを見つける。そこには生々しく描かれた殺人衝動の手記だった亮介は次第にノートにのめりこんでいく

原作が”沼田まほかる”のサスペンスと言うことで

期待に胸わくわくで観ました

期待以上!

映画の構成も素晴らしいのですが、原作小説がぶっちぎりで良いのでしょう

一つの手記を中心に、時代や場所全てを取り払い

主人公がのめりこんでいきますが、視聴者も同じで強制的にのめりこまされます

ギリギリの謎解きと、そこに連想される全て

容赦の無い罪の意識無き

残虐的な視点と行為

どれもが素晴らしい描写です

そんな映画のおすすめ度は

4のおすすめ(5点満点)

感想中心となります

それでは見ていきましょう

あらすじ ネタバレなし

亮介は自分の経営するレストランの経営が軌道に乗り始めていた。
レストランオープン前から店の準備をしてくれているパートナデーであり婚約者の千絵、父親がレストランに遊びに来たときに千絵を紹介した。

その数日後、父が末期ガンであることを知った亮介。何故か時を同じく千絵が失踪する。千絵の書いた履歴書もでたらめだった。

病気の父親の住む実家に顔を出すようになった亮介は、父親が留守の時に押し入れの奥に「ユリゴコロ」と書かれたノートを見つける。何気ない気持ちでページをめくり読み進める亮介は、そこに綴られる美紗子と言う少女の心が生々しくもあり心を奪われた。それは自らを殺人者と言い、おさえられない殺人衝動や常人には理解の出来ない恐怖と孤独だった。

千絵の行方を捜すうちに昔同僚だったという細谷が相談に乗ってくれた。
亮介は千絵の居場所を探しながらユリゴコロにのめりこんでいく・・

あらすじ詳細はMIHOシネマ参照

映画情報&キャスト

『ユリゴコロ』 2017年 日本
【監督】熊澤尚人
【脚本】熊澤尚人
【原作】沼田まほかる『ユリゴコロ』
【製作】石田雄治
【出演者】
美沙子(吉高由里子)
 :ユリゴコロを書いた女性
  心に大きな葛藤と殺人衝動を抱える
洋介(松山ケンイチ)
 :美沙子に寄り添う
みつ子(佐津川愛美)
 :美沙子
亮介(松坂桃李)
 :レストランを経営する
亮介の父(貴山侑哉)
千絵(清野菜名)
 :亮介の婚約者
細谷(木村多江)
 :千絵の元同僚

超感想中心の評価考察

シネマトゥデイ youtube公式より

原作は沼田まほかるの同名小説

沼田まほかるが原作の秀逸サスペンスが原作です

複雑な家族関係と常人で計り知れない女性の性(サガ)を中心に展開するサスペンス『九月が永遠に続けば』で文壇デビュー、メンヘラ気味の女性が自己肯定愛を中心にその女性に陶酔する陣治の愛を描いた『彼女がその名を知らない鳥たち』、そしてこの小説では映画化までを果たしています。

ユリゴコロも複雑怪奇な人間関係を描きます。

女性の心理、心の奥底に渦巻く気持ちをストーリーラインにのせて表現するのが実に巧妙です

ユリゴコロでも、これが純愛なのか殺人衝動を抑えるための代替的な愛なのか

広大なテーマとチャレンジングな設定が本当に秀逸です

監督は熊澤尚人

監督の熊澤尚人は、元々は大手製作会社(ポニーキャニオン)でキャリアと経験を順当に積んで、その後自身で脚本を書き下ろすなどして初の長編映画監督として蒼井優を主演に『ニライカナイからの手紙』で高い評価を得ています

その後、ミュージックビデオやオリジナルビデオ、映画等でキャリアを積み

コミック原作のホラー『親指さがし』、三浦春馬と、多部未華子主演の学園青春ストーリー『君に届け(2010年)』など小説やコミック原作からの製作を中心にキャリアを進めます

本作『ユリゴコロ』では、亮介の現実と、ユリゴコロの中で描かれる美沙子のわかりそうでわからない関係性と、時代設定の前後をおぼろげな手記を朗読する美沙子の心情病描写とともに美しく映像描写されます

主演の吉高由里子はアカデミー賞助演女優賞獲得

きれっきれのボケ演技で天然キャラクターを演じたり、バラエティでも抜けてることが多い吉高由里子が、

本来は正統派の演技派女優であったことを思い出す作品です

『蛇にピアス』で各新人賞を総ナメにして、数々のテレビドラマや映画に出演を果たしています

ほんわかとした雰囲気と、毅然とした冷たさの両面を出すことの出来る女優です

本作での見どころとしては

吉高由里子が世界の何もかもが自分とは違い、世界の全てを異質に感じる女性、美沙子”を演じます

美沙子は唯一、心安らぐ気持ちを感じることの出来る死や血、残虐行為がユリゴコロとして彼女に平穏をもたらします。その美沙子が洋介との出会いと、愛で幸せや喜びを知っていく変化していく様子の演じ方が実に良いです。

心についたトゲや、もそもそした物がこそぎ落ちていくかのようで、この変化大きな見どころの一つです

タイトルのユリゴコロの意味

「この子にはユリゴコロが欠如している」

幼い時にお医者さんに言われた言葉を美沙子が覚えていたもので、手記のタイトルにもなってっています。

ユリゴコロとは、

”物事に感動したり感銘を受けたりする気持ち”のことです

医者は何かの比喩で言っただけなのかもしれません。

でも少女美沙子に、ユリゴコロが全くなかったわけではなく

ユリゴコロを抱く対象が他の普通の人とは違っていたということです。

シリアルキラーの定義として、秩序型・無秩序型と言うものがあります

美沙子は明らかに無計画なので、無秩序型

キチンとした教育を受けなかったり、親からの愛情不足でそうなっているものと思われます

劇中ちらっと、美沙子の母親が美沙子を無理くり街中を手を引っ張るシーンからもそうでしょうね

美沙子は無秩序型のシリアルキラーで、衝動を抑えられない

ユリゴコロの対象は、血とか殺人とか異様なモノに向かうのです

ちなみに、サイコキラーと言う定義もありますが、劇中殺すことによって快楽を得ているわけでもないのでサイコキラーとも少し違い、美沙子は愛を得たり安堵するための代償行為であろうと思います

亮介をめぐる数奇な運命

視点としては、一貫して亮介目線で物語は展開していきます

結果的に、亮介は美沙子の息子だったわけですが

亮介の目を通して展開する

手記「ユリゴコロ」内での美沙子の描写が絶妙です。

亮介が物語や空想小説のノンフィクションではなくて、誰かが書いた本当の話であると想像するのは容易いことでした。

さらに亮介は物語にのめりこんでいきます。

こういう展開がうまい、殺人の告白は古来からよく使われている映画の手法ですが、それでもうまい

合わせて読みたい『1922』

亮介は完全に手記に没頭していきます。

このユリゴコロ、それだけ人を惹き付ける何か魔力のような物が隠されています。

美沙子は、類まれなる文才の持ち主だったはずです。

冒頭の文章は、太宰の人間失格「恥の多い人生を歩んでいきました」

を思わせるような「私のように平気で人間を殺す人間は・・・」

この一文で、一気に惹かれて、引き込まれます。

リアルとはいえ、世界観が想像しやすい。

沼田まほかるさんがユリゴコロを別冊で出してくれれば、一気読みしちゃいそうです

心理学的に恐ろしいのは、

亮介は手記を読む前から車をドライブするときに乱暴な運転をします。

この辺に白昼夢を見ながら、”暴走”しやすい性格であることを示唆しています。

既に、美沙子の”血”が色濃く入っているということなのでしょうね。

手記を読むにしたがって、あがなえない魅力に取りつかれて父親や周囲の人に嘘をついてまで手記を読みに実家に訪れます。

自分の衝動と美沙子の残した手記が肝炎に一致したのでしょう

私の田舎では”ひっつき虫”と言われる

服に付く草のようなものがあります

オナモミの仲間でゴボウの実なのですがマジックテープのように服につくあれです!

ひっつき虫のオナモミ特集!実は絶滅危惧種!?基本情報まとめ【植物 ...

美沙子のイメージでは、身体に引っ付く虫が

”常識”の代名詞のように扱われて、ユリゴコロを感じられな時には

その虫に身体中を覆われているのです

そして殺人をした時にも自己主張をする

代償として現場に残すのです

ヤクザたちを血祭りにあげた美沙子は

虫を現場に置いてくるのですが・・・

亮介はそのことに気が付きます

それは亮介も”ひっつき虫”の存在を感じられたからに他なりません。

サイコの血はサイコ!

ただ物語は急展開して、急転回していくのです

合わせて読みたい『アメリカン・サイコ』

なんでハッピーエンドなんだ

個人的な思い出しかありませんが

この映画の良い所は、徹底的に人に理解できない胸糞の悪くなる、吐き気の及ぼす程の非日常・非常人を超えた残虐性と、その感性にあると思うのです。

とことがです、

ところがです!

ところがです!

ラストに向けて、なんだハッピー感漂っていないか?

なんだよ、思い出せ!

殺人鬼だよ、亮介はそれなりにトラウマになっちゃいそうだけど

洋介(亮介の父)、人生狂わした張本人ですよ

なんで許しちゃうんだっけ?

まあ、一足飛びにダムから突き落とそうとするのもどうかと思うけど。

この辺の心理描写は常人では測れない。

洋介なんて結局は、愛を感じたのは美沙子だけだし

美沙子なんて何事もなかったかのように、ヤクザ殺して千絵助けて、また洋介に会いに行くし

ハッピーエンドじゃん。

でも、よーく考えると

洋介は死ぬ間際に、二度と会うことはないと思っていた殺人ワイフが戻ってきて、しかも違う顔になっている。

これって、

「あーあ、やっぱな生きてたんだ。悪夢がよみがえる。でもやっぱ好きだなぁ

とかって愛を追認したのかな

そうだとしても、残った洋介にとっては

一見ハッピーにも見えますが、最悪のシナリオしかないはず

決してハッピーじゃない。

死んだ思ってた母親が殺人鬼で・・・
さらに婚約者はヤクザの愛人で・・・
さらに母親がヤクザを皆殺しにして・・・
父親は死んで・・・
この後ヤクザの報復もあって・・・

考える限り最悪の人生が待ってそうだ・・・

恐ろしい

亮介の彼女はヤクザから逃げられたと言っても、実家とかも身バレしていますからね。

本当に安心できないラストの先がめっちゃ気になります。

映画の感想まとめ

めっちゃ名作だと思います

原作が小説なので、純粋に脚本がよかったかどうかまでは分かりません。

原作も、”沼田まほかる”なのでぶっちきぎりに良い作品が大です

それにしても、時間と手記と主人公亮介の置かれた境遇と、点が線の上に重なり形になっていくプロットが最高です

各々の時代での美沙子の描写が半端なく鬼気迫り、常人のわからない苦悩がわかるような形の視覚化が良いです

賛否両論の映画だとは思います

非常に映像も音楽もクリティ高く作られており、おすすめです

独善的評価[5段階]としては
 映像・音楽      4
 キャスト       5
 ストーリー構成    5
 初見で読み取れない謎 4