映画感想『蜜蜂と遠雷』異なった天才の形を視覚化!直木賞と本屋大賞受賞が原作の音の美しさを表現

2020-08-15

映画『蜜蜂と遠雷』は恩田陸原作の直木賞と本屋大賞受賞した小説から映画化!日本で開催される国際コンクールへの前哨戦として名高い芳ヶ江国際ピアノコンクールで異なる音楽の天賦の才を持つ4人の情熱と天性、苦悩がぶつかり合う。文学で表された天才達の”音”と”情念”を映像で美しく・はかなく、刹那に描写されます

原作が小説の音楽家のドラマ映画

しかも、直木賞と本屋大賞受賞をWで受賞

本屋大賞を2回受賞した作家は恩田陸さんがはじめてとのこと

これは期待できます

でも微妙な設定の、

ある音楽コンクールを舞台に広げられる天性のぶつかり合い・・・

結論としては、私は推しです

色々な前振りや小説を先に見た人は、ちょっと違うとか確かにあるのかもしれません

小説を見ていない私は初見で見て

音の視覚化!

この作りにかなり引き込まれました!

そんな映画のおすすめ度は

4のおすすめ(5点満点)

感想中心となります

それでは見ていきましょう

あらすじ ネタバレなし

日本で開催される国際コンクールへの前哨戦として名高い芳ヶ江国際ピアノコンクール
そこでは3週間の期間を掛けて互いのピアノの腕を競い合う。異なった天性をぶつけ合う4人のチャレンジャー

7年前の母の死まで天才少女ともてはやされた栄伝亜夜、ジュリアード音楽院から正統派のピアノ奏者マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、自ら生活に根付いた音楽を目指す高島明石、故ピアノの巨匠ホフマンより推薦状を携えて破壊的な才能を見せつける風間塵

それぞれの個性とそれぞれの事情をピアノの鍵盤をたたき音で奏でるピアノ奏者
1次予選通過、そして2次予選を通過できるのは誰か天才達の才能がぶつかる

映画情報&キャスト

『蜜蜂と遠雷』 2020年 日本
【監督】石川慶
【脚本】石川慶
【原作】恩田陸『蜜蜂と遠雷』
【出演者】
栄伝亜夜(松岡茉優)
 :かつての天才少女
  母の死がきっかけに弾けなくなったピアノ
  コンクールで天才達に触れることで
  さらに爆発的に才能を急成長させる
マサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィン)
 :ジュリアード音楽院に属するピアノ奏者
  幼少のころ栄伝亜夜とともに
  栄伝亜夜の母親を師として仰ぎ
  ピアノの才能を開花した
風間塵(鈴鹿央士)
 :故ホフマン先生と言われるピアノの巨匠
  をもうならせた才能の持ち主
  木と布で出来た音の出ない鍵盤でイメージだけで練習する天才
高島明石(松坂桃李)
 :楽器屋で働きながら
  ピアノを諦めず年齢背源ギリギリのラストチャンスで
  芳ヶ江にチャレンジする
その他
斉藤由貴、鹿賀丈史、ブルゾンちえみ、光石研、平田満

超感想中心の評価考察

東宝公式 youtubeより

石川慶監督・脚本

ポーランドの大学でアカデミックに映画論を学んだという、石川慶監督は今回は脚本も含めてWで担当しています

石川慶監督の長編作品としては、

妻夫木聡と満島ひかりの共演である幸せな夫婦の本当の姿をあぶり出していくミステリー『愚行録』でデビュー

ヴェネツィア国際映画祭に正式上映し、2017年度新藤兼人賞銀賞受賞を獲得しています

『蜜蜂と遠雷』とは違った意味で、人間の内面をえぐる奥深い映画です

内面を掘り起こしていくという意味では、本作にも通じるところがあり

原作が両方とも秀逸な小説が元になっており、両方とも直木賞を獲得しています。

まさに直木賞作品の映像化クリエイターですね

本作では、日本アカデミー賞をはじめ各賞を総ナメにしています

作品賞や監督賞、主演女優賞、新人俳優賞など

数々の受賞を果たしています

主演の松岡茉優の演技が光る

主演の松岡茉優は、バラエティーやインタビュー等でも変わった性格で光るキャラクターです

どことなく天然で、突き抜けた彼女ですが演技力には定評があります。

内向的で妄想癖のあるOLを面白い視点で描いた『勝手にふるえてろ』、リアルな家族より仮想の家族のほうが本物の家族という家族の定義に迫った『万引き家族』で高い評価を得ています。

個人的には、『勝手にふるえてろ』、コミックが原作の『ちはやふる』の若宮詩暢キャラクター設定がイメージがぴったり合いとても好きです

原作のイメージを忠実に表現できる人なのでしょう。

本作でも、天才少女である栄伝亜夜の

苦悩と天然の天才

引き出しから次々と天才の要素を引き出してくる様が本当に素晴らしかった

素人のような天才:高島明石役で松坂桃李

シンケンジャーから俳優のキャリアをスタートさせた松坂桃李

もう日本のなかの映画やドラマシーンで彼なしでは語れないほどメジャーになりました

仮面ライダー俳優は有名になるけど、ゴレンジャー戦隊物の俳優は伸びないと言う通説を跳ね返した筆頭だと思っています

テレビドラマ版『この世界の片隅に』『連続テレビ小説 梅ちゃん先生』などシリアスな物が多い気がします。比較的映画では、幅の広い役割をやっていますが戦隊ものをイメージする『ガッチャマン』実写版、お医者さんで『チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像』、秀逸ミステリー『ユリゴコロ』など

本当にさまざまです

本作では、3人の天才をブーストアップさせる

ある意味一番異なった才能を持つ、高島明石役で挑みます

正直、派手な役柄では無く

実直にピアノに向き合い、キャリアの最後を覚悟して自分をそれでもピアノに向かわせる役としてしっとりとした演技が心を打ちました

破壊的天才の風間塵役で鈴鹿央士

風間塵役で新人の鈴鹿央士が大抜擢されました

オーディションを勝ち抜いて役を獲得した彼は、日本アカデミー賞はじめ、数々の新人賞を総ナメにして日本の映画界に名前をとどろかせました。

芸能界入りの経緯もまた面白く、

『ちはやふる』『ラストレター』の広瀬すずが、撮影中のエキストラの中から鈴鹿央士を見いだしたとのこと!

”すず”にちなんで、すずの文字が入る鈴鹿央士に芸名をしたとか、凄いキャリアスタートです

本作『蜜蜂と遠雷』では、破壊的才能を持つ風間塵を演じます

映画自体、全体的にセリフが少ないのに輪掛けて、風間塵のセリフも少なめ

キラッキラとした、ただピアノが好き

って全身から醸し出す雰囲気とオーラ

この辺が高く評価されたのでしょう

個人的には、周りの演技者達がレベル高く引き上げられたようにも見えました

まさに、天才達の共演でレベルが上がる感じ

そういう意味では、本作に相応しいのでしょう!

映画タイトル『蜜蜂と遠雷』を考える

『蜜蜂と遠雷』のタイトルを考えます

同名の小説は読んでいないので、かなりの部分が

想像も入りますが、個人的な経験では映画を見て面白かった、興味がわいた

原作の小説は映画よりも”いい”事がかなりの確率で高いです

そういう意味では見た方が良いのだろうと思う作品

じゃあ、この訳のわからないタイトルは何を指すのでしょう。

蜜蜂

これは、複雑なメタファも何も無く

ストレートに

「養蜂家の家庭で育った風間塵」を指します。

ひょっとしたら才能への起爆剤的な意味かもしれません

それでは、

遠雷

これが難しいです。

パット考えると、海辺のシーンで見た遠雷を差し、それは自然が奏でる音楽そのもの

栄伝亜夜が母親から伝授された世界は音に溢れ、音で奏でることが出来ると言う教えのようにみえます。

本作は映画の冒頭から栄伝亜夜を中心に展開されていきますが、風間塵と言う存在と序盤でわかる高島明石と言う天才に火をつける特別な才能を持つ天才が出てくることで、正統派の天才マサル・カルロス・レヴィ・アナトールを加えて4人の異なる天才がガチンコ勝負する物語なのだと気がつかされます

そう考えると、栄伝亜夜の物語だけではなく4人の物語

4人が主役と言って良いでしょう。

そうだとすると遠雷と言うのは、

「風間塵(蜜蜂)に刺激される天性・天才そのもの」なのではないかと思います

天才の定義とみる世界 音の可視化

「映像化不可能」と映画に対する小説の解説では良く載っています。

それほどかなぁと思いつつ見ていると

確かに

天才の形をどう映像表現するのか、天才の見る世界をどのように視聴者へ訴えるのか、可視化するのか

非常に重要で難しいものです

小説では、文字から読者に対して訴えて、読者の感性を駆り立てる形で作られていたはずです

それが映画となると違う、全て映像と音で表現が必要になる。しかもピアノの天才の物語だから、ピアノの演奏の善し悪しなんて一般の凡人の視聴者には絶対わからない。それだけに難しい。

普通の人(私)は、ピアノ奏者の演奏聴いたって、流暢に弾いていたら全部”天才”に見えちゃいますからね

本作ではどう表現しているのかというと、自然の奏でる”音を可視化”したかのようなイメージ映像を挿入することで実現しています。

なんだか良くわからない映像が時折サブリミナル効果のように挿入されています。

ピアノだったり、遠雷だったり、遠い過去の記憶だったり、見たことのない情景だったり

その辺の見せ方が上手かった、

ピアノの天才には、頭の中で上からダンスゲーや音ゲーのように鍵盤が半透明で音が振ってきているのかもしれませんね。

海辺のシーンでもそうです。

天才達が奏でる音楽は、音でなくてもいいのです

ケンケンパ遊びでも十分に音として見えるのです

それが十分に伝わってきます

そして、それを見ている高島明石の「天才達が何しているかわからない」、このセリフもまた包容力があり、天才達の音楽の全てを一般大衆にわかる形で、音を可視化して旋律に直すことの出来るインタープリターとしての天才なのです

映画の中でも、それぞれの見える情景の可視化が天才毎で違っているのも特徴です

コミック『ピアノの森』との比較

ネットでの評判を見ている、非常に多くの方が似ているとか、パクっていると考えてらっしゃいます

私も見た瞬間は似ているなと思ったのですが、やはりテーマが違うと思います

『ピアノの森』では、不遇な境遇の一ノ瀬海がピアノに出会うことによって、世界的なピアニストに成長していく人間ドラマです

本作『蜜蜂と遠雷』では、天性の才能と才能がぶつかることによって異なる天才達が、急成長いていく様を描いています。確かに似た感じになるのは否めないですが、ガンシューティングを映画化したら、全部クリント・イーストウッドににていると言うようなもの。

全然別物で良いと思います

『ピアノの森』の旋律は、コミックと言うこともあって劇中の登場人物の驚きと受けた感銘によって天才性や才能を感じ取れることが出来ますが、『蜜蜂と遠雷』では個々の天才達が見ているであろう頭の中のイメージを映像として見ることにより感じることが多い作りになっています

そういう意味で、本作ではピアノ演奏そのものは誰の演奏も変わらなく聞こえます。

それでも少しだけ不満 ピアノ演奏が多すぎ

映画全体のプロットや演出としては、大満足の本作出です

あくまでも個人的な感想で言うと、ピアノ演奏時間に振っている時間が長い。

これもわかるのですが、ある一定の長さを確保しないとピアノっぽくないし、

音楽をしている本職の方からしたら、

「何だこりゃ」ってなりますものね

でも、バランスとしてもう少し小説を読んでいない人向けにも、各個人の背景や状況の説明につながるようなパートを入れて欲しかったなぁと

ピアノ演奏は、誰の演奏を聴いても

凄い上手

と言う風にしかならないので、天才達の人格や成り立ちの隙間説明がもう少し欲しかったかぁ・・

映画の感想まとめ

賛否両論の映画でしょうね

原作の小説も賛否入り乱れています。

個人的には、難しい領域でよくぞここまで映像化・視覚化できたものだと、ただ感心して映画そのものにはかなり引き込まれました。

ピアノの演奏そのものの芸術性はわかりませんが、そのピアノを弾いている演奏者の天才性を訴える手法として演出はかなり良かったです。

2時間もあっという間にすぎ、没頭

続きがあるのなら、天才達のその後のストーリーもみてみたい。

非常に映像も音楽もクリティ高く作られており、おすすめです

独善的評価[5段階]としては
 映像・音楽      4
 キャスト       5
 ストーリー構成    5
 初見で読み取れない謎 4