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『イングリッシュ・ペイシェント』対比による美しさと儚さを見事に融合した名作:コラム的映画あらすじ評価感想・動画配信

映画『イングリッシュ・ペイシェント』は1996年に公開されたアメリカの恋愛スペクタル映画!まさにアカデミーを取ってください言わんばかりの純文学から抜き出した映像をスクリーン用に脚色し、マイケル・オンダーチェ原作でアンソニー・ミンゲラ監督によるアカデミー9部門受賞の優秀作品

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映画ショートコラム あらすじ中心ネタバレ含む

最初にこの映画を見たのは、いつだったか、思い出せない。確か公開された当時にリアルタイムで見たような気もする。当時は、何も考えないで映画を見た気がするが、改めて見るとなるほど、名作な気がする。

気がするってのは、おかしなことだが、ストレートにみると退屈な展開にもとれるタンタンとしたストーリーで、今のドンパチやどんでん返しになれた目で見ると、一層退屈に見える。展開されるストーリーン背景が悠久のサハラ砂漠で展開されるのもあるかもしれない。。。

なんて、入りでらしくない郷愁のスクリーンへの想いで書き始めてみましたが。

本作は、アカデミー12部門ノミネート、世界の各賞を総なめにしたビッグタイトル。面白くないなどと口が裂けても言えないビックな映画です。

あらすじを紹介していきましょう

ロッキー、マネー、アレックスの3人はとある手段で空き巣を繰り返す不良達だった。彼らはアレックスの父親が警備会社に勤めていることを利用して、各自宅の合鍵を入手して空き巣を繰り返していたのだ。一方第二次世界大戦末期、イタリア、トスカナ地方。カナダ人従軍看護婦ハナは、飛行機で撃墜され全身に大火傷を負った記憶を亡くした男に出会う。身元不明のこの男は唯一いろいろなメモと挟んだ「ヘロドトス」の本を持つのみだった。
ハナは謎の男「イギリスの男(イングリッシュ・ペイシェント)」の病状を心配し、行軍に付き合わずにイタリアのある修道院に二人とどまることを選ぶ。
その修道院には、手の指のない男カラヴァッジョ、爆弾処理班のキップがいつの間にか集い、各々の生活を通じて、イギリス人の男は自分の過去を回想しながら思い出していく。自分は探検家で、サハラ砂漠を探検し、「泳ぐ人の洞窟」を発見したこと、仲間がいたこと、
そして、仲間の一人の婦人キャサリンと激しい不倫に溺れていたこと。。。

まあ、まあ、さすがアカデミー

序盤どうなるかと思いますが、アカデミー作品って、心に必ず残るものがある。ってのが私の持論。本作品もそれに漏れずに、言いも言えぬまったりとした満足感が残る作品です。

ただ、序盤から終始退屈なほどの展開!これは、わざとこういう演出をしているのには違いないだろうけど、退屈そのもの。それを織り込んでも素晴らしい作品で、淡々とした映像描写のいちいち刺さる美しさが素晴らしい。

映画全体的には、対比で構成されているため、見ている側からするとどれも明確なメッセージ性を感じることができます。

戦争・個々の人生、砂漠・オアシス、美しい男・火傷の男、美しい看護婦・爆弾処理係、砂漠・不倫

などなど、どれもこれもシチュエーション的には、この時代でよくありがちな設定にもかかわらず、”映える”、そんな表現がまさにぴったりだと思いますね。単純な設定にもかかわらず、ストーリー展開も、イギリス人の男の語りではなく、回想で展開されるストーリー。

そのため、未来と過去、自分と人物の感情や行動に驚くほど接点を相互に持たせない、ストーリーの持って行き方が逆に素晴らしい。最期のシーンでハナがキャサリンの書いた絶筆をアルマシーに読み聞かせる、ここで唯一の接点が生まれ、思いが交差する唯一の瞬間だ。

そして、ラストシーン。もうアルマシーはいない。

全体的に、思いたどってみればアカデミー級の出演者ばかり

ハナ(ジュリエット・ビノシュ)
アルマシー(レイフ・ファインズ)
キャサリン(クリスティン・スコット・トーマス)
ジェフリー(コリン・ファース)

すんごい顔ぶれです

原作はおいておいて、映画としてはストーリーとしては、2面性があり現在と過去の回想

そして、過去の回想に大不倫の恋愛の愛想劇があり、その部分が純文なのでしょう。なのですが、個人的にはアカデミー級なのは実は現在の第2次世界大戦末期での恋人を失いながらもはつらつと生き、純粋に今を生きて、新しい恋に一喜一憂を繰り返す、ジュリエット・ビノシュが演じたハナが、アカデミー級なのではないかと思ってきた次第

ジュリエット・ビノシュの、演技はスクリーンに映えまくっていて、行動も気持ちも、そして姿形さえも美しいです。

彼女の天真爛漫なふるまいを通じて、接点のないサハラ砂漠での恋愛劇をただの患者の頭の中の回想であり、戦争で死にゆく人々、亡くなってしまった人の中にもそれぞれの事情があり、戦争という誇大な名目でなくて不倫という愛憎劇の中で命を落とす人もいることを痛切に感じることができた。

逆に彼女以外が全部、悲哀で終わるんですよね。アルマシー(イングリッシュ・ペイシェント)という名前ひとつで、ドイツ人であることを疑われ、恋人が命を落とす悲惨さ、旦那に強制的に飛行機に乗せられ墜落し恋人に置いてけぼりくらい暗闇の中で死んでしまうキャサリン

そして、コリン・ファースという勿体ない使い方。飛行機に乗って不倫相手に特攻をかます嫉妬!『英国王のスピーチ』『アナザー・カントリー』のコリン・ファースですよ。。。

これら全てはジュリエット・ビノシュの演技を通して。現実の現在の世界に置き換わって、患者に成り代わる。

この辺が素晴らしいメタファーの繰り返しなんでしょうね。

総じて、一度は見る作品だと思います。

恋愛映画好きの人はもちろん、スペクタクル好きの人にも相性がいいと思います。

個人的に納得がいかなかったのは、二つほど

カラバッジョ(ウイレム・デフォー)の役柄が何の効果があったのか、ピンとこなかった。いなくてもいいような。。。恨みの種類を表したかっただけなのかもしれない。キャサリンの大恋愛に対しての突然の終止符も、よくわからない。原作を見ると細やかな描写はわかるとおもいますがね。

そして、すごい微妙なところを表現しているのは、アルマシーの親友のマドックスが現地人の男性と、同性愛関係にある微妙な表現をしている。この時代のイギリス(世界中)まだまだLGBT的にも違法であったはずで、小さなところにも、細やかな表現しているところも、ちょび驚き

お勧めの映画ですと思う、今日この頃!

― hogeru -

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