『夕陽のあと』母親の愛情と資格!過去と未来を見据えた母はどこへ:動画配信・映画感想あらすじ考察
映画『夕陽のあと』は2019年公開の日本のドラマ映画。母親になろうとする育ての親、かつて子供を手放し母親に戻ろうとする生みの親、二人の母親の葛藤と子供の幸せ、母の愛情を貫地谷しほりと山田真歩が演じる問題作
最近こういう、ドラマ映画にもハマっています
蓋を開けると、骨太なしっかりとしたシナリオに支えられて
サスペンス要素なんかは少なく、ベタな展開なれど
演技派の女優陣が演じると、抜きん出たドラマ性を発揮します。
今回紹介する、「夕陽のあと」もそんな映画です。
本作は鹿児島県最北端の長島町で作られたプロジェクトで作られた映画で、子育てと親の定義をテーマに作られた作品でもあります。
養子縁組はもちろん、DVや不妊治療などにも焦点を当てたものになっています。
☆4のおすすめ(5点満点)
感想中心となります
それでは見ていきましょう
あらすじ ネタバレあり
一年ほど前に長島町にやってきた茜。彼女は食堂で?剌(はつらつ)と働き、町に馴染んでいるようにみえる
その素性は一切謎の茜、なじみのない町で珍しく独身の女性がいることで存在が少しばかりミステリアスだ
一方で、五月は、ぶりの養殖業をする夫の優一とともに豊和という7歳の子供を育てていたが、豊和は実の子ではなく里子として引き取った子であった。二人は不妊治療を続けながらも、豊和をこよなく愛し、養子縁組をしようとしていた。
豊和はそんな夫婦の元で育てられているが、毎朝豊和に声をかける女性がいた。それは茜だった。豊和のキャンプに帯同したり、常にそばにいる行動がまるで母親のようだった。そんな茜の姿を見た五月は、柄も言えぬ不安を覚えて茜のことを不審に思い始める。一方で、豊和の養子縁組には実の母親の了承が必要だった、そんな矢先、豊和の実母が見つかるが、それが茜だった。
茜は、当時事件として話題になったネットカフェ用事置き去り事件で豊和を置き去りにした母親だった、壮絶な環境の中で豊和を育て自殺の間際まで追い詰められた茜が最後に取った行動だった。そのことを知った五月は、茜との会話を繰り返し、豊和の未来を考えて二人は一つの結論を出す。
実母と育ての親、茜は身を引きいずれ町を出るであろう豊和の為に、町の外にも居場所を作るということにして、町を後にするのだった。
映画情報&キャスト
『夕陽のあと』2019年 日本
【監督】越川道夫
【脚本】嶋田うれ葉
【音楽】宇波拓
【撮影】戸田義久
【出演者】
佐藤茜(貫地谷しほり)
:一年前に長島町にやってきて、食堂で働いている。
日野五月(山田真歩)
:幼い時から育てていた豊和との
特別養子縁組申請を控え、
本当の親となる事を楽しみにしている。
日野豊和(松原豊和)
:幼い頃、実母と離され、
今は五月に育てている。茜と仲良くしている。
日野優一(永井大)
:五月の夫。ぶりの養殖業をしている。
新見秀幸(川口覚)
:役場で働き、五月の弟。茜に恋焦がれている。
日野ミエ(木内みどり)
:豊和の祖母。
超感想中心の評価考察・レビュー
豊和の過去・茜の過去
ミステリアスな町に似つかわしくない、茜
そして、里子の豊和
何故、豊和は五月たちに引き取られたのでしょう?
豊和はまだ7歳で、不妊治療を進めていた五月・勇一の夫妻が引き取ります。本当に手塩をかけて我が子のように愛情を注いで里子を育てていたのです。
そんな豊和を陰から見守っていた女性が茜!
小さな町で五月達の目にとまるのも遠くなく、すぐやってきました
茜は実の母親で、実は豊和は都内のネットカフェに置き去りにされた事件の被害者だったと判明するのです
その当時、豊和は酷い脱水状態であり、母親の茜も生活に困窮し、自殺未遂を図ったようでした。
豊和自身はしりませんが、幼いためこの事実を知りません。
あまりに衝撃的な展開ですよね。
豊和は五月のことを母親だと思っているし、茜のことは優しいお姉さんのように思っているし、もしかしたら知らない方が幸せなのかも知れませんね。
二人の母親
豊和にとっては先程も書いたように、母親が二人います。
育ての母親である五月は、なかなか自身に子供が出来ず、そのかわりに豊和が物心ついた時から育て、彼が7歳になる時に特別養子縁組をようやくできると喜んでいました。
しかし、特別養子縁組には実母の承諾が必要で、実母の行方は分からないと言われていましたが、突然実母である茜が登場してしまうのです。
そして、茜は自分が親権を持てるようにしてしまうのです。
五月としては悲しすぎますし、茜の行動に自分勝手さを感じずにはいられません。
しかし、一方で茜は茜で辛い人生を歩んでいたのです。
事件が起こった当初はネグレクトだとか、子供が嫌いだとか言われていましたが、彼女は妊娠中に相手の男からDVを受けており、生活が困窮し、頼る相手すらおらず、荒んだ暮らしをしていました。
そんな時に、都内のネットカフェに豊和を放置する事件を起こし、自らは自殺未遂を起こしてしまうのです。
そう聞くと、彼女自体にも同情してしまいますよね。
あまりに悲しすぎます。
そして、彼女は刑期が終わり、工場に勤めましたが、豊和を忘れられずに豊和が住んでいた鹿児島へ探しに行くのです。
あまりに辛い過去です。
子供には全く関係がありませんが、二人の母親は母親でそれぞれの痛みや悲しみを心に秘めているのです。
豊和の行方
豊和は五月たちのお陰もあり、とても素直で良い少年に育っています。
豊和と一緒に暮らしたいとばかり思っている茜の気持ちを知ってか知らずか、豊和はこういうのです。
「お母さんと仲直りしてあげて」、と。
そして、そのあとこんな言葉も言うのです。
「ぶりには沢山のお母さんがいて、育ててくれたみんながお母さんなんだ
だから、僕は島の関わった人みんなに育ててもらっている。
だから、茜もお母さんだよ」
と言うのです。あまりにいい子過ぎて、言葉もありません。
その豊和の言葉もあり、茜は五月と話し合い、島を出ていくのです。母親たちは幼くて純粋でまっすぐな豊和に助けられるのです。
こんな優しい子に育った豊和が素敵すぎます。
タイトルに込められた想い
タイトルの「夕陽のあと」に込められた想いとは、どんな物でしょうか?
これは、茜がネットカフェに豊和を仕方なしに置き去りにしていた心情を表しています
どうしようもなく、追い詰められどうにもならない精神状態の時に、夕陽が茜を照らし、空から振ってきたのです。大きな大きな夕陽が照り注ぐほど、茜の気持ちは死へと向かってしまった、どうしようも無い気持ちをサンセット(夕陽)の心情的なメタファとして表しています
そして、本映画は、その”後(あと)”に、どうなったか
結局は、母は子を忘れられないし、
そういうことをしても後悔しか生まれない。
なので、”夕陽のあと”と言うことでしょう
映画の感想まとめ
本作は育ての親、生みの親、それぞれの立場から見える子供への愛情がとても現れていました。
正直どちらの気持ちも理解できるので、胸が締め付けられる思いでした。
是非、お子さんがいる方、女性の方にオススメです!
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