『マリッジ・ストーリー』耳が痛い離婚協議!掛け違う男と女の気持ちの違いを絶妙描写 アカデミー級:動画配信・映画感想あらすじ考察
『マリッジ・ストーリー』は第92回アカデミー賞に複数ノミネートされ、助演女優賞を獲得しました、隠れた名作になること間違い無しです!普通の夫婦が結婚のあり方とボタンの掛け違いを絶妙なセリフのぶつけ合いで表現する”離婚”。愛し合っている夫婦が何故別れを選ぶのか深いお話が詰まっているお話です。
スカーレット・ヨハンソン、スターウォーズのアダム・ドライバーの長回しの台詞回しは必見です。
本当に耳が痛いんです。
結婚したことある人、彼氏彼女と喧嘩したことのある人なら絶対わかるこの気持ちを絶妙に表現しています。まったく混じり合わない平行線の会話を他者視点で冷静に見ることが出来ます。
もっとちゃんと、話し合おうよーって思ってしまいます。でも出来ないんですよね。
とてもおすすめの作品です。
あらすじ ネタバレあり
ニコールは結婚を期に、映画女優から舞台俳優へと転向しLAからNYへ移り住み、チャーリーの手がける演劇の舞台俳優として、徐々に名前を売り出し始めた。
チャーリーもNYの小さな劇団を率いて、劇団員を養いながらも脚本家兼、舞台監督として周囲から才能を高く買われていた。
ニコールとチャーリーはお互いの才能をリスペクトしつつ、夫婦生活を送っていた。
チャーリーは舞台では妥協できない堅物だが、二人の大切な男の子ヘンリーに対しては優しく根気強く接しているいい父親だった。
そんなあるとき、ニコールはチャーリーとの結婚生活と自身の女優としてのキャリア、ヘンリーとのこと全てに対して自分を見失い“ニコール”と言う存在感のなさに嫌気がさした。
女優業の仕事でLAへヘンリーを一緒に連れ出し、そのままチャーリーと突然離婚協議に入った。
お互い納得していないものの、協議は平和に行おうと誓い合っていたがニコールが友人からの紹介で優秀な離婚弁護士ノラを代理人にしてからは話が二人不在であらぬ方向に走り始めた。
チャーリーの養育権やニコールの居住地の関係で、LAに住まないとヘンリーの親権を獲得できないことからチャーリーは多額の出費をしつつLAとNYの二重生活をして弁護人をノラに対抗して建てた。
決着の付かない不毛な法廷論争に、疲れ果て二人は再度話し合いで解決しようとするが、全くかみ合わない会話に互いにヒートアップし、本心ではない言葉を浴びせ合った。最後にチャーリーは自身の口から出た言葉に驚愕して、ただ謝り泣き崩れた。
LAでヘンリーを育て、たまにLAに遊びに来るチャーリーにヘンリー会わせる事で決着した論争。
ニコールとチャーリーが得た物は何だったのか・・・・・
映画情報&キャスト
『マリッジ・ストーリー』 2019年 アメリカ
【原題】Marriage Story
【配給】Netflix
【監督】ノア・バームバック
【脚本】ノア・バームバック
【製作】ノア・バームバック
デヴィッド・ハイマン
【音楽】ランディ・ニューマン
【撮影】ロビー・ライアン
【編集】ジェニファー・ラム
【出演者】
ニコール(スカーレット・ヨハンソン)
:新進演劇の舞台女優で
元映画やテレビの女優
チャーリーとの結婚を機に舞台女優になり
LAからNYへ生活拠点を移す
チャーリー(アダム・ドライバーー)
:舞台監督、脚本家
NYを拠点としている
ニコールがLAに戻ったことから
離婚訴訟になっている
ノラ・ファンショー(ローラ・ダーン)
:ニコールの弁護士
感想考察
Netflix配給の恐ろしさ
『マリッジ・ストーリー』を見て最初に感じたのは二つです。
- Netflix配給の素晴らしさ・恐ろしさ
- 『クレイマークレイマー』とも違う、感情のぶつけ合い
二つは、違うようでいて関連していると思っています。まず逆からですが、『クレイマークレイマー』はダスティン・ホフマンとメリル・ストリープの夫婦が子供を巡って親権争いを繰り返します。非常にエンターテイメント性がにあり、起承転結が明確にわかり、ストーリとして展開していくんですよね。それこそ夫が無職になったり、子供が怪我したりとか。
同じ離婚協議を扱い、類似性を取り沙汰される、この『マリッジ・ストーリー』ですが、何か違う。
そう、生々しいんです。言葉の掛け合い、浴びせ合いや夫婦の感情の起伏を感じ取ることが出来ます。普通なら事件やアクションで埋め尽くされるような映画が、ロングのセリフ回しや、言葉の応酬、回想シーンでとにかくセリフで埋め尽くされています。
これは、Netflix配給のせいと言っても過言ではないでしょう。恐らく普段の映画界なら見向きもされない、こういうエンターテイメント性がなく、淡々と進むストーリーにセリフのみで魂を当てていくなんて予算をかけずに企画を大量に裁くことが出来るVODだから出来ることではないでしょうか。トータルでNetflixとして、お金もあるし。
こういう映画が量産されると、おそろしくなります。
だって、結果的にマリッジ・ストーリーは、見終わった後に疲れてしまう自分がいるぐらい、没頭できましたもの。気を抜くと、ストーリーについていけないもっていかれる。
ただ、驚くほど、進展がないですけどね。
一方で、おそろしいのが駄作も生まれる確率が高いのかなぁと危惧してしまいます。
アカデミーノミネートの価値はあるか
結果的に2020年度第92回のアカデミーでは、助演女優をとりました。ローラ・ダンです弁護士役で素晴らしい物はありました。正直、助演まであるかなぁと言う気はしますが。
さて他にもノミネートされていましたが、その価値はあったのでしょうか?
”ほげる”的には、めちゃくちゃ価値あり、良かったです。他のアカデミー賞受賞作や人がどうであったかと言うよりは、『マリッジ・ストーリー』は妥当だと思います。
特に、アダム・ドライバーは主演のノミネートは妥当であり、凄かったと思います。
映画の中の構成と対比が素晴らしく、
男と女
NYとLA
後ろ向き(保守的)と前向き(ポジティブ) ※カラオケの曲にも現れています
演劇(離婚協議のために創る生活)とリアル(普通の生活)
愛してる(別れたくない)と愛してる(でも別れたい)
これらの要素が、男性・女性、弁護士(第3者)、子供からの視点と入り交じりながら表現されていきます。
前述したように、映画を見終わった後にもの凄い疲労感に襲われますが、これは離婚協議そのものを体現来たということです。製作側はある程度これを意図してやっているのだとおもいます。
男と女の違いを鮮明に描写
ニコール(スカーレット・ヨハンソン)と、チャーリーの、LAでのチャーリーの何もない新しい部屋での口喧嘩は圧巻でした。チャーリーの想いが痛いほど流れ込んできます。
つばも飛んできます。
壁に穴も空きます
最後には泣き崩れます(チャーリー)
男はロジカルな生き物です、チャーリーにはこの結婚協議の意味の無い会話全てに納得も出来ないし、どこかで引き返せる気もしていた。
そこに、まだチャーリーとしては愛しているニコールに罵声を浴びせかけた自分を見つけたときの哀しみ、切なさ、自分をコントロール出来ない状況であり泣き崩れ、そして思ってもいない自分と心の奥底をかき乱されて暴言を吐いてしまい、ニコールに謝ります。
この全てが痛いほど伝わってきました。
この罵声で自分への区切りも付いたんですね、もう引き返せないと。
スカーレット・ヨハンソンの演技も凄く、なんだかわからないけど、このままじゃあいけない、自分を取り戻したいという”思い”先行の離婚協議に対する感情がにじみ出ていました。なので、ニコールの言っていることは上手く説明できない。だけど、別れたい。ヘンリーは自分の物よと、伝わってきました。
こういう物全ての感情のぶつけ合いが秀逸でした。
合わせて読みたい結婚のもう一つの形『天使のくれた時間』
離婚協議の末、二人の得られた幸せとは?
世の中には、色々な結婚生活があるけど、ニコールとチャーリーにとっては、少なくともどちらも、気持ち的にも金銭的にも満点ではない、そこから数歩下がったところでした。
それは妥協でも、勝ち取った勝利でもなんでもない、自分達の協議だけでは片付けられない、第3者によるあらぬ解決方法の”整理”でしかなかったのです。でも、その”整理”しか二人をい落ち着かせることは出来なかった。悲しい終わり方ですよね。
結婚と離婚に対しての夫婦のあり方・向き合い方・終わり方の、あるパターンを垣間見る事が出来たようです。結局はむなしい戦いなのに、どんなに素直に話しても幸せにはなっていないんですよね。
なので、得られた物は何も無しです。お互いが自分らしい自分を取り戻したようでいて、取り戻していない。
ただ、自分の新しい道を歩き始めただけです。
映画の感想まとめ
断然見た方がいいです、奥さんや恋人とみるときには注意しましょう。
結構、重めの台詞回しが延々続く割には映画としての進展はおそろしくないのが特徴です。
人の好き好きは別れるところだと思いますが、間違いなく隠れた名作になること請け合いです。
そして、Netflix配給凄い、Huluやアマプラも、是非続いてほしいものです。
家族で何かを話し合いたいとき、誰かに向き合いたいときに一歩冷静になれる作品です。
是非見るべきおすすめの作品です。
独善的評価[5段階]としては
映像・音楽 4
キャスト 5
ストーリー構成 5
初見で読み取れない謎 5
いつも通り、この映画の評価も毎度同じでが、 基本どんな映画でも大好きな”ほげる”としては、に超面白い作品と思います。
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