『カッコーの巣の上で』体制への反抗と巣立ちを精神病院の抑圧された秩序から表現:動画配信・映画感想あらすじ考察
映画『カッコーの巣の上で』はアカデミー主要5部門を総なめにし、主演のジャック・ニコルソンの名前を世に知らしめたヒューマンドラマ。精神病院の厳格な管理体制に自由な生き様で反抗し衝撃のラストに誰もが感動する不朽の名作!マクマーフィーは病を偽り病院へ入院するが、そこは刑務所以上に抑圧された世界だった、精神病患者とのふれ合いを通じて病婦長と対立を繰り返すが・・
ジャック・ニコルソンの出世作として
映画史に残る本作は、ミロス・フォアマン監督の送る社会風刺の問題作です
映画のなかでは、ブラックユーモアや社会へのメタファーに溢れ
誰が見ても、心に何かを残す本作は、
間違いなくおすすめです
それでは見ていきましょう
あらすじ ネタバレあり
マクマーフィーは刑務所への収監を逃れるために心の病を患ってる振りをして精神病院に入院する。
その病院では、看護婦長のラチェッドを中心に厳格な管理体制が敷かれ、患者達は徹底的に抑圧された生活を送っていた。マクマーフィーは奇想天外な行動を繰り返し、抑圧された患者や仲良くなった仲間達に徐々に笑いと自由を取り戻していった。
マクマーフィーの行動はラチェッドとぶつかり合い管理がどんどん強化されていく。
マクマーフィーはネイティブアメリカンで言葉のしゃべれないチーフとどことなくおどけているビリーと病院内で女性を連れ込みどんちゃん騒ぎを行ってしまう。ビリーは婦長のラチェッドから家族にそのことを伝えられて激しい責めの中で苦悩し自殺してしまった。
マクマーフィーはそのことで婦長のラチェッドと対峙し、病院側に捕まり他の患者と隔離されてロボトミー手術を施されてしまうのだった
チーフがマクマーフィーを再び見たときには、ロボトミー手術のため自身の意思も力も自由さも失われたマクマーフィーがいた。
チーフはそんなマクマーフィーを優しく抱きしめ、そして枕をマクマーフィーの顔にあてがい動かなくなるまで押しつけた。チーフは一人で窓ガラスをぶち破り、精神病院から脱出して自由を手に入れるのだった・・・
映画情報&キャスト
『カッコーの巣の上で』 1975年 アメリカ映画
【原題】One Flew Over the Cuckoo’s Nest
【監督】ミロス・フォアマン
【脚本】ローレンス・ホーベン
ボー・ゴールドマン
【原作】ケン・キージー
『カッコウの巣の上で』
【製作】ソウル・ゼインツ
マイケル・ダグラス
【音楽】ジャック・ニッチェ
【受賞】第48回アカデミー賞 主要5部門を独占
作品賞、監督賞、脚色賞
主演男優賞(ジャック・ニコルソン)
主演女優賞(ルイーズ・フレッチャー)
【出演者】
マクマーフィー(ジャック・ニコルソン)
:刑務所収監を逃れ、心の病を装って
精神病院へ入院する
ハチャメチャな行動で病院長と対立し
病院内の患者を巻き込みながらも
患者達に笑顔をとりもどしていく
婦長ラチェッド(ルイーズ・フレッチャー)
:病院婦長
患者達を徹底的に
管理制御しようとしている
チーフ(ウィル・サンプソン)
:精神病院の患者
テイバー(クリストファー・ロイド)
:精神病院の患者
マティーニ(ダニー・デヴィート)
:精神病院の患者
ビリー・ビビット(ブラッド・ドゥーリフ)
:精神病院の患者
超感想中心の評価考察・レビュー
アカデミー総なめの感動の名作
アカデミー賞を作品賞、監督賞など主要部門を総ナメして映画史に残る作品を作ったミロス・フォアマン監督の代表作です。
70年代、80年代を代表する監督は、このほかにも『アマデウス』では、モーツァルトの半生を独自の切り口で宮廷作家の世界を描き世界を湧かせました。こちらもアカデミー賞で監督賞を受賞しています
ジム・キャリー主演の『マン・オンザ・ムーン』では、実在のコメディアンの伝記的作品を描き、ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)を受賞し高く評価されています。
その、物事の本質に対して本人からだけでなく、他者からの視点で客観的な、そして風評的な視点を交えながら鋭く人物像を掘り起こしていくのが得意です。
本作も、全ての抑圧された精神病院という世界の中で、強制的にもたらされている秩序の中に、人間の根源的で無垢な自由について”あがなう”姿を、マクマーフィーと、ラチェッドの反目を通じてエキセントリックに表現しています。
間違いなく映画史を代表する本作は、至極の1作になること間違いなしです。
『アマデウス』も併せて是非見て欲しい!
映画タイトルの意味合いが凄い
『カッコウの巣の上で』同名の原作は、ケン・キージーのベストセラーで映画作成の10年以上前の作品となっています。日本人からすると、カッコーの巣??となってしまい、何かかっこつけてすかしたタイトルだなー思ってしまいます。
でも深い意味があるんですねー。
原題の"One Flew Over the Cuckoo’s Nest"、一羽がカッコーの巣を巣立ったとなります。
一羽って何?カッコーの巣って、何?ってなりますよね。それぞれ以下のような意味合いになります。
- 一羽 => チーフ(インディアン)
- カッコーの巣 => 精神病院の比喩(侮蔑的意味がある)
ほぼ、タイトルでネタバレに繋がっていますが、
そうなんです原作で主役はチーフなんです。
最後の最後に、巣を飛び立ち自由を手にするチーフ(ウィル・サンプソン)が新の主役です
時代背景と映画
原作の時代は1960年代、アメリカでは先住民(ネイティブアメリカン)の人権問題と、居住地問題で揺れています。また、管理体制側と自由を標榜するアメリカの若者達の中で民主的な表現の自由など各種の論争が巻き起こっています。
そんなアメリカの中での本作の受け止めは、痛烈な体制側への批判と痛快な反抗を表していて、ある意味とてもわかりやすい内容に映ったと思います。
さらに、映画を感動的にしているのはビジョナリーリーダー(マクマーフィー)の拓いてくれた明るい未来をネイティブアメリカンのチーフが巣を飛び立つ(脱走する)事で、どんな状況でも境遇でも決して諦めななければ、明るい未来があるということが表現されています。
マクマーフィーの死についても、管理体制側に抑え込まれ翼をもがれた状態では生きていけないと言うことを痛烈な皮肉で表しています。
このへんの受けとめは見ている人の状況や境遇でかなり違った物になると思います。
現代社会において『カッコーの巣の上で』を見ても、たとえそれが日本の現代で見ても同じように窮屈な檻に閉じ込められた自分達の陰を映し、明るい未来に向けての行動の原動力が湧き上がってきます。
ジャック・ニコルソンの破天荒でメリハリのきいたアカデミー賞演技
アカデミー賞の主演男優賞はジャック・ニコルソンが受賞しています。
ジャック・ニコルソンは本作も含めてアカデミー賞ノミネートは通算12回に上り、受賞は何と主演2回、助演1回の怪物俳優です。
『イージー・ライダー』、『愛と追憶の日々』、『恋愛小説家』などどれも名作と言って間違いありません。
ジャック・ニコルソンの物怖じしない大げさすぎるメリハリのきいた演技と、豊かな表情と台詞回しから全世代から評価を受けています。色々な役でこれほどノミネートされるのは流石としか言えないですね。
『カッコーの巣の上で』のジャック・ニコルソンは、精神病院内での態度をおさえた演技、患者達とバカ騒ぎをする姿、薬治療を受けたふりやロボトミーを受けたあとなどまさに百面相です。
時折ふざけた表情の中から覗かせる真剣なまなざしが印象的です
主役でないときでも、常に演技の中心になってしまう、アクが強すぎて前面に出すぎてしまうところも好きです。映画としてアカデミー賞を獲得している『ディパーテッド』でも、主演を食い尽くしそうな演技でしたが、アカデミー賞獲得の陰の立て役者でしょう。
合わせて読みたいアカデミー関連
ルイーズ・フレッチャーの毅然としたクールさ
ルイーズ・フレッチャーは、これまで無名でしたが主演女優賞をとることで一気にハリウッドのスターダムにのし上がります。
彼女は鉄面皮の婦長ラチェッドをクールにそして非情さが、精神病院内での”空虚な管理”を際立たせます。
彼女の演技があるからこそ、映画全体での精神病患者達の笑いや自由がコントラストとして浮き上がり際立たせます。
海外の評価 2020/04時点 英エンパイヤ誌史上最高の映画100本
評価は、両評価サイトで、ぶっちぎりでめっちゃいいですね。
本当に同感です。
さらに、イギリスのエンパイヤ誌にも、2017年に史上最高の映画100戦に選ばれています。43位です
Metascore (批評家) | 83 |
User rating | 8.7/10 |
TOMATOMETTER (批評家) | 93 |
Audience | 96 |
映画の感想まとめ
ミロス・フォアマン監督の描いた、『カッコーの巣の上で』は、ケン・キージーの原作とは多少味付けが違うものの、誰もが共感し感動するラストを見事に表現しています。
現状の打開と、明るい未来に向けた強烈な示唆と、社会背景を痛烈に風刺する見事な映画だと思います。
映画を通じての表現となっていますが、ミロス・フォアマン監督自身の生い立ちによる影響が大きいと思います。
監督の幼少期はナチスからの迫害を受けて育っていますので、少なからず原作に共感しています。そういうところが心を打つ源泉になります。
どんな状況でも時代を超えた名作というものがあり、本作はそのなかに必ず入ると言って間違いないと思います。
超超おすすめの作品になります!
独善的評価[5段階]としては
映像・音楽 5
キャスト 5
ストーリー構成 5
初見で読み取れない謎 5
いつも通り、この映画の評価も毎度同じでが、 基本どんな映画でも大好きな”ほげる”としては、に面白い作品と思います。
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