映画感想『ラストエンペラー』何かに囚われ続けた皇帝を語る!

2020-01-29

新王朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀(ふぎ)の生涯を中華人民共和国の戦犯として自ら告白した日記形式の書を回顧していく形で回想していく。溥儀は皇帝に生まれ、一般市民として死ぬまで激動の時代をいきぬいたラストエンペラー、壮大なシーンと音楽で構成された歴史スペクタル映画

アカデミー賞にて作品賞その他を受賞している『ラストエンペラー』は間違いなくおすすめの長編映画

あらすじ

新王朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀(ふぎ)、1950年のハルピンにてソビエトの抑留から帰る戦犯者達の中にその姿があった。自殺をするために列から抜け出し、一人洗面所で手首を切りお湯に浸ける。意識が混濁とする中で鏡を見て自分の生涯を回顧し始める。
幼き記憶の中に西太后より即位を命じられ3歳の幼さで清王朝の皇帝に即位する。
目が覚めるとそこは、中華人民共和国の戦犯者の思想教育の収容所だった。所長はハルピンで救ってくれた男。所長から自分のことだけで無く、周りの人のことも考えて素直に告白し回顧録を書かせられた。
溥儀は、自信の回顧録を書きながら半生を回想していく。

清朝崩壊と共に袁世凱の中華民国大総統就任、紫禁城の中だけが溥儀の帝国の世界、イギリス教員のジョンストン先生との出会い、二人の妻との婚姻、北京政変による紫禁城追放、日本のサポートによる天津・満州国の初代皇帝就任から日本の敗戦と回想は続く。。。。


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映画情報&キャスト

『ラストエンペラー』イメージ画像
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『ラストエンペラー』 1987年 イタリア、中華人民共和国、イギリス合作
【原題】The Last Emperor
【監督】ベルナルド・ベルトルッチ
【脚本】ベルナルド・ベルトルッチ
    マーク・ペプロー
【製作】ジェレミー・トーマス
【音楽】坂本龍一
    デイヴィッド・バーン
【出演者】
溥儀(ジョン・ローン)
婉容(ジョアン・チェン)
レジナルド・ジョンストン(ピーター・オトゥール)

静かな映像美で時代を語る

ベルナルド・ベルトルッチ監督の歴史大作

『ラストエンペラー』は、概ね史実の流れに従いながらも、細部では脚色・エンタテイメント化して歴史を語っています。

でも細部が違うとか、歴史家ではないのでそんなことはどうでもいいですね。

この映画は、溥儀が生きた激動の時代を改革側からではなく最後の皇帝としてどう生まれ、どう生き抜いてきたのか、どう生かされてきたのかを中国の壮大さと王朝の崩壊する様として静かに映像美で魅せてくれます。

ロケ地として当時は、初めて許可された紫禁城での撮影は数ヶ月にわたって中国共産党の協力を得て行われている大スペクタルです。

日本とは違うかもしれませんが、皇居を使って撮影に匹敵すると思います。普段は観光客であふれかえっている紫禁城を使って、ここまで作り込めたのも、共産党の力あったればこそかもしれません

紫禁城の即位後から清王朝崩壊、紫禁城追放までの、紫禁城内の敷地の”所々の雑草”や“草原のような雑草”さが、もの凄い印象が強いです。落ちぶれ感とか当時の情勢を如実に表現できているのではないでしょうか。

溥儀が乳母のアーモを追っかけるシーンでは、逆に幼子が母親を追いかけるような綺麗な映像にもみえます。

映画音楽が情景を豊かにする

『ラストエンペラー』イメージ画像
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映画の中で使われている、映画音楽は坂本龍一が手がけてサウンドトラックとしても一つの壮大な作品に仕上がっています。アルファ波がビンビンに出まくるような、ゆったりとしてそれでいて壮大な歴史の中の1コマに身を置いている、溥儀の姿が思い浮かびます。

このブログも、サウンドトラックを聞きながら執筆していますが、時代・場所、溥儀の想いと様々な情景が思い浮かびます。派手な音楽なんていらないんですよね。心に残っていればふとした拍子でそれらがあふれてきます。

映画における歴史観

ちょっとうがった見方をします。

映画の中でコレと行ったメッセージ性はないかもしれませんが、本作を見るとやはり日本は悪人って言う印象が色濃く残って見えますね。

史実はあまり重視していなかったとは思いますが、敢えてポイントポイントを映像化して、何かを訴えたかったように見える節もあります。

  • 清王朝の堕落 兵士や宦官の失墜、堕落した勤務態度
  • 従者達の忠誠度
  • 国民党の暴虐っぷりは映像化なし
  • 中国共産党の文化大革命の時代 ← 中国政府公認で映像化だろうから何かあるような
  • 日本軍の悪行を収めたフィルムでの思想教育
  • 日本軍、甘粕とか態度悪すぎ

映像美の中で出演者達が表現する物

圧倒的な壮大さと映像美、細部にわたっての紫禁城での時代背景を反映した状態(映像化)どれも素晴らしいですが、名優達がその映像に花を添えていきます。

ジョン・ローンは、『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』でミッキー・ロークと共演して人気を不動の物としています。本『ラストエンペラー』の溥儀を演じるに当たっては、役になりきるために相当没頭したようです。後に自分の幼年時代から青年までの生い立ちにダブらせて感情を移入していったとのこと。

個人的には、青年期の白眉の美少年から老いていくまでの心の入った微妙な心情の変化を表した演技が素晴らしいと思います。あふれる自信、紫禁城を追放された後の不安、どこに行っても何か自分以外の物がぶら下がっているような感覚。ジョン・ローンの怪演は素晴らしい。

そして、何かしっくりくるのが、ピーター・オトゥールです。『アラビアのロレンス』を演じて、アラブをオスマン帝国から解放したロレンスを演じたピーター・オトゥールがジョンストン先生を演じます。長身の青い瞳の中に溥儀はどう映っていたのでしょうか。

ロレンスとは違う役回りですが、波瀾万丈の溥儀の教師としてスペクタクル映画に出てくるだけでピリリと引き締まる感じがします

故宮紫禁城 ロケ地

中国に行ったときにも、ここだけは訪れようと心に決め、見てきました。こんな壮大なところで即位式が行われ、清王朝歴代の魂が募っているのを感じ、中国という国のパワー恐ろしさを肌身に感じました。

溥儀が即位した紫禁城の故宮太和殿の現代の写真

最近では、日本の『キングダム』でも使用されましたね。

合わせて読みたい『キングダム』

映画の感想・まとめ

壮大で優美な映像、ベルナルド・ベルトルッチが描き出した世界は素晴らしいと思います。

圧巻の一言です。ラストエンペラー溥儀の生涯を通した回顧の中で、常に何者かに囚われ囲われている人生亜あり、この映画はその溥儀の中からの視点で徹底的に表現されています。

世界中からも評価されアカデミーも9部門受賞です。日本人も坂本龍一が作曲賞で受賞し快挙ですよね。

何度みても、アカデミー作品って、受賞タイトルの名前だけでなく、本当に映画として芯がしっかりしています。

見どころがあるという作品ではありませんし、所詮人間の60年の歴史を全部一気に語ろうと思っても片手落ちです。

最後のシーンですが、コオロギってあんなに長生きなのかな?ってのが少し。1ヶ月ほどが寿命ですので、
ここは演出で個人的には多分コレは何か、最後の最後に解放された溥儀の生涯に対してのメタファーだと思います。

そういう所では無く、溥儀からの視点に立った、皇帝と最後の庭師になった溥儀の視点、新たな帝国の文化大革命の時代との対比で十分楽しめると思います。

超おすすめの作品になります。

独善的評価[5段階]としては
 映像・音楽      5
 キャスト       4
 ストーリー構成    5
 初見で読み取れない謎 5

いつも通り、この映画の評価も毎度同じでが、 基本どんな映画でも大好きな”ほげる”としては、に面白い作品と思います。