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『ヤクザと家族 The Family』任侠から忍耐へ:動画配信・映画感想あらすじ考察

映画『ヤクザと家族 The Family』は監督に藤井道人で、主演を綾野剛に迎えたヤクザの世界の社会派ヒューマンストーリーとなる!任侠から時代の変節を経て世界観を変えていく作品!ヤクザの道に入った男と、組長の姿を通して、1999年、2005年、2019年の3つの時代から描かれている・・・・

色々な意味で、話題をさらった本作は

『新聞記者』などで、高評価を各会からもらった藤井道人監督による、任侠風のファミリーヒューマンドラマ仕立ての映画です

ツボとしては、一人の青年の人生を通じて、ヤクザの世界観と掟・任侠・しがらみ、そして社会的な差別を遠回しに描いている、非常に良作と言えましょう

監督や脚本家などは違いますが、奇しくも主演が同じ綾野剛が出演していた『楽園』の描いていた限界集落での特定の差別、疎外感などに通じる物があるような気がします

そんな、本作はめっちゃお勧めです

☆4のおすすめ(5点満点)

感想中心となります

それでは見ていきましょう

あらすじ ネタバレなし

1999年。山本賢治(綾野剛)の母は、幼い頃に他界・父はバブル崩壊後に手を出した覚せい剤の過剰摂取により亡くなった。ある日、行きつけの食堂で、偶然居合わせた柴咲組・組長:柴咲博をチンピラの襲撃から救う事になる。
翌日、賢治は柴咲の部下・中村努(北村有起哉)に、柴咲組の事務所まで連れて行かれ、柴咲組長にお礼を言われ、組に入らないかと誘われるが、賢治は拒否。柴咲は強制はせず、名刺を渡し、賢治を帰した。その後、街を歩いていた賢治は、侠葉会の組員に殴られ、拉致される。

賢治の仲間2人、細野竜太(市原隼人)と竹田誠(菅田俊)も拉致され、暴行を受けていた。少し前に、賢治が覚せい剤の売人を殴り、覚せい剤を奪って海に捨てたことがあったが、その売人が侠葉会の組員の一人だった事から拉致されたのだった。

賢治も暴行を受け、3人は半殺しの目にあい、侠葉会の若頭補佐:川山礼二(駿河太郎)に「覚せい剤はどこへやった」と聞かれると、「海へ捨てた」と答える。激怒した川山は、3人の臓器を売ろうと、香港行の船に乗せようとする。

その時、賢治のポケットから柴咲組長の名刺がでてくる。名刺のお陰で3人は解放される。その後、賢治は柴咲と親子の盃を交わし、柴咲組の組員となる。・・・

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映画情報&キャスト

『ヤクザと家族 The Family』/2021年1月29日公開。
【監督・脚本】藤井道人
【音楽】岩代太郎
【主題歌】millennium parade「FAMILIA」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
【キャスト】
・山本賢治(綾野剛)
・柴咲博(舘ひろし)
・工藤由香(尾野真千子)
・中村努(北村有起哉)
・細野竜太(市原隼人)
・竹田誠(菅田俊)
・豊島徹也(康すおん)
・大原幸平(二ノ宮隆太郎)
・木村愛子(寺島しのぶ)
・木村翼(磯村勇斗)
・加藤雅敏(豊原功補)
・川山礼二(駿河太郎)
・大迫和彦(岩松了)
・工藤彩(小宮山莉渚)

超感想中心の評価考察・レビュー

綾野剛、かっこよかった。

さすが綾野剛

その一言に尽きる

あらためて、振れ幅も拾いながら、こういうグレた役が本当に似合うと思う。

ヤサグレた感じ、狂気を感じながらも、寂しい目。組に入った刺青の綾野剛もかっこいい。たまに子供の様に見える演技も良かった。柴咲組長の懐が大きすぎて、賢治を自分の最愛の息子の様に優しく接してくれるので、賢治は子供のような表情をたまに見せる。

恋仲となった由香に、心を許した人にだけ見せるような、さらけ出す演技が凄く光る。

賢治が車に轢かれるシーンがあったが、あれはスタントではなく、綾野剛本人だそうです!凄すぎる。海に落ちるシーンも、引き画にもかかわらず自身で演技したらしいです。完璧です。

時代の流れで衰退していくヤクザの悲哀 ネタバレ有り

1999→年賢治が組長と出会い盃を交わす、

2005年→賢治がヤクザに入りホステスの由香に会う。
     中村の代わりに、賢治が罪をかぶり、刑務所に入る

2019年→時代は大きく変化する。ヤクザの世界は存続も危うい状態に。

…という流れできています。

2019年、賢治が出所すると、柴崎組へ行くが、「暴対法」の影響で多くの組員が辞め、残っているのは6人だけ。しかも、組長は老いて、3年前に癌になり衰退している。

まるで浦島太郎状態!

昔の様に羽振りの良かった事務所は消えていました。ヤクザは普通に携帯電話も買えない、組を抜けたとしても5年間は銀行口座、生命保険、ローン等も組めず人間扱いしてもらえない。そんな現実を噛みしめた賢治は、組を辞めた細野に会い、由香の行方を探してもらう。

すると由香には14歳の娘がいる事が分かる。

賢治と由香の子供だった。賢治は復縁したいと由香に伝えるが、父親がヤクザなんて言えないと拒まれる。

賢治は組を抜け、細野に工場の仕事を紹介してもらい、由香の再婚相手として3人で暮らし始める。しかし、細野と賢治と、若い男同僚3人で食事している時に、同僚が「二人の写真とらせてくださいよー」と、軽い気持ちでSNSに「本当の元ヤクザ」と写真を拡散する。

たちまち世間にバレてしまい、公務員として働いていた由香は、「今の旦那が元ヤクザ」とバレ解雇、娘の彩も学校に居られなくなり、引っ越しする羽目になってしまう。賢治に「今までうまく行ってたのに、アンタさえ現れなければ…!」と賢治の元を去る。

細野も妻子がいたが、家はもぬけの殻になっていた。結局、細野に「アンタさえ現れなければ…!」と殺されてしまう。なんとも空しく感じた瞬間。でも、賢治より、悪いのは拡散した同僚なのに…。賢治も被害者だろうに。写真を拒む賢治に細野は「いいじゃないですか」と写真撮るのを誘っていた事に矛盾を感じる。

そういう人間の身勝手であんな結果になるのが切なすぎる。過去は好き勝手やって、繁栄しているように感じたヤクザの時代も、ここまで衰退してしまうと哀れ

「平家物語」の「祇園精舎」を思い出す・・

「この世は全て変化し続け、勢いが盛んなものでも、永久には続かず必ず衰え、春の夜の夢、風に吹き飛ばされる塵のようである」とう意味だが、

まさにそういう空しさが伝わってくる映画だった。

翼にビックリした

子供の成長として、翼には心底びっくり

小さい子供だった翼が、賢治が出所した14年間で、大きくなってヤサグレ

自分の亡くなった親が組長だったと知り、「言ってくれればいいのにガキだから遠慮して言ってくれなかったんすよ」と賢治に言っている。

このポイント、演出的にも良く

凄く時代の流れを感じさせられる。

チンピラまがいな事をしながら、スマホやSNS拡散を上手く使い、羽振りがいい。翼は「ヤクザなんて、時代遅れっすよ」そういいながらも、父親を殺したやつを探し始める。

賢治は察したのか、翼が犯人を突き止める直前に、翼の代わりに犯人の元へ行く。小さい頃から可愛がっていた翼に「俺みたいになるな」という、親心のようなものだろうか。このシーンはグッときたが、やはり悲しかった。

成長した翼を演じているのは磯村勇斗。彼は、最近自分のよく観る作品に出ている気がする。この役が凄くはまり役で、似合っていた。綾野剛に見劣りもせず、かっこよく、

次世代を期待

「今日から俺は!!」「珈琲いかがでしょう」意外で、自分が観た磯村勇斗のヤサグレてない役は「仮面ライダーゴースト」ぐらい。今度、全く違う役も観てみたいと思った。

映画の感想まとめ

観た後は、時代の移り変わりを感じ、少し空しい気持ちにはなるが、久しぶりの任侠

そのハラハラ観もまたよしとなりました。

役者達の演技が良く、世界に入ってしまう。

組長の舘ひろしは、懐が大きくて、優しいが、凄んでも、目が優しい。

”もっと危ないヤクザ”的な「微笑んでいるけれど、こいつはヤバい」

ような、目つきがあればもっと良かったかもしらんと思いつつも

総じて、面白い

任侠映画なので、観る人は限られる映画だと思いますが、時代の虚しさや、過去から現在のヤクザの背景が凄く分かりやすく描かれているので、今まで観た任侠とは違う感覚で観れると思います。

めっちゃおすすめです