『鑑定士と顔の無い依頼人』何ともいえないラスト考察 ネタバレ:動画配信・映画感想あらすじ考察
映画『鑑定士と顔の無い依頼人』は人生の悲哀を見事に随所に表現しているヒューマンドラマ色の強いミステリー・恋愛映画!美術鑑定師でその道の有名人のヴァージルはあるとき直接顔合わせのできない奇妙な依頼鑑定の依頼を受ける、その依頼された美術品の中に紛れてヴァージルでさえ値段のつけられない工芸品が紛れ込んでいたのだが・・・
タイトルからしてよくわからない映画ですが
映画のジャンルとしては、ミステリー映画になると思います
決して殺人とか乱暴なことが起こらないのですが、映画全体的に”謎”だらけで構成されています。
おすすめ度満点の映画です
感想中心となります
それでは見ていきましょう!
あらすじ ネタバレなし
美術品鑑定人のヴァージルは、オークション界隈で権威として君臨する、その道の顔だ。
長らく、美術・芸術・骨董品の品の鑑定人として数々の品物を扱ってきた。遺産などの整理として、管財人から物品の鑑定を依頼されることもある。
ヴァージルは、オークションハウスで、
自身でオークショニアをして、オークションハウスをしきていた。オークションには様々なものが持ち込まれた。
歴史的な価値のあるものから、時には本当に価値のある品物や、絵画。有名な美術家が手がけた無目の絵から世界に名をはせた絵画までだ。ヴァージルは、それらの品物の本当の価値を見抜く鑑定眼を持っている。
オークションハウスでは、相棒のビリーがクライアントの振りをしてヴァージルが手に入れたい本当に価値にある絵を、ヴァージルがオークショニアとしてコントロールした価格で落札させていた。
落札した美術品はどれも、”女性”の絵画だった。ヴァージルは、自宅の秘密の部屋にそれらの絵画を飾り、名画を自分一人だけのものとして楽しんでいた。
あるとき、親の遺産を鑑定して欲しいという電話が入り、ヴァージルは一人鑑定に向かうものの、依頼人は姿を現さない。
そんなやりとりを何回か繰り返すが、依頼人は電話だけで何を目的としているのかつかみかねていたところ、依頼人不在で財産目録の作成に入るのだった。
依頼人の彼女の名前は、「クレア」
名前しかわからず、使用人も彼女を見たことが無いという。
ヴァージルは、財産の中に自動人形(オートマタ)の部品を見つけ、一瞬で価値に気がつき機械職人のロバートに復元を依頼して、オートマタ目当てでクレアの財産整理を始めるのだった。
ヴァージルは、クレアの財産を整理する中で、クレアが実は屋敷の中で過ごす引きこもりのような生活をしている美しい若い女性であることに気がつく。
ヴァージルは、クレアに惹かれ、
彼女の患う広場恐怖症を克服するべく、色々なサポートをして心を許していく。
美術に一生を捧げ、潔癖症であり、老人になるまで童貞を守っているヴァージルは、いつしか本当の美術以上の価値のある愛を見つけるのだった。
ロバートが自動人形の復元が終わりかけ、クレアに夢中になるヴァージルの背中を後押しして、プロポーズをほのめかしていく。ヴァージルは、オークションより大事なものを見つけたのだ。
いつしか、自分の大事な美術コレクションの秘密もクレアに打ち明け、クレアも広場恐怖症を克服して二人の幸せな生活が始まろうとしたときに・・・・・
[showTable]映画情報&キャスト
『鑑定士と顔の無い依頼人』 2013年 イタリア
【原題】La migliore offerta / The Best Offer (英)
【監督】ジュゼッペ・トルナトーレ
【脚本】ジュゼッペ・トルナトーレ
【出演者】
ヴァージル・オールドマン :ジェフリー・ラッシュ(Geoffrey Roy Rush)
ロバート :ジム・スタージェス(Jim Sturgess)
クレア・イベットソン :シルヴィア・フークス(Sylvia Hoeks)
ビリー・ホイッスラー :ドナルド・サザーランド(Donald Sutherland)
ジェフリー・ラッシュは、誰しもが高い評価をする『シャイン』でのアカデミー俳優です。
本作品でも気難しい潔癖症の老年男性が若い女性に恋していく姿を演じきっています。
美しい女性は、オランダ女優のシルヴィア・フークス。
この映画の怪しいところは、ビリーのドナルド・サザーランドだ。彼の登場で一気に映画がきな臭くなる(良い意味で)
超感想中心の評価考察・レビュー
名匠ジュゼッペ・トルナトーレの示唆的メッセージ
本映画を手掛けたのは、名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督です
ジュゼッペ・トルナトーレは、数々の高評価を受けるヒット作を手掛けています、それもブロックバスター的な映画ではなく人生の為になる、何かいいことを示唆してくれるような映画が多いです。
なんといっても、『ニューシネマパラダイス』でのトトとアルフレードの語らいが映画ファンならずとも一度は目にしたことのある不朽の名作です。さらに『海の上のピアニスト』、『マレーナ』『ある天文学者の恋文』など静かな、そして心が温まる名作を出し続けています。
そんな名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督が、本映画で語り掛けてくるものは何なんでしょうか?少なくとも心が温まる系ではありません。
個人的には、
人生の価値、人の価値基準
は、人それぞれで大きいも小さいもないと言う示唆的な映画ではないかと思っています。
何がフェイクだったのか
この映画では、フェイク・本物の価値観を、鑑定人ヴァージルが評価するところに事の本質を訴えかけてきます。
ネタバレも含んでしまいますが、何が本物なのか、何がフェイクなのか、それぞれに何の価値があるのかは人それぞれの基準によって評価され、価値が出来上がっていいきます。
それを”愛でる人”(めでる)の価値判断基準で良くもなり、悪くもなるもの
映画のはいりかた、としては鑑定人ヴァージルが美術品や依頼された鑑定対象の”物”、全てに対して値踏みをして価値基準を付けていきます。その価値を作り上げた以降は、だれもがその基準に対して疑問を持ちません。
鑑定人は絶対なのです。
また、ヴァージルもその中では腕利き中の腕利き。業界の中のフィクサー的な存在です。
映画の中で、ヴァージルは自身の依頼される鑑定品に対して一般受けする価値と説明で回りを騙します
本当に、価値のあるものに対しては低評価をして、価値のないものにはそこそこ”納得感”で決めていくのです。
そういう意味ではヴァージル自身が一番のお値打ち品なのかもしれません。
そんなヴァージル自身がフェイクに騙されていくのは皮肉そのものの展開をしていきます。
ヴァージルの求めたもの
ヴァージルは、結局のところ人生に何を求めていたのでしょうか?
有名な絵画に囲まれ、高級なワインを飲み、一人で絵を愛でる!
しかもその絵画は、どれも女性を描いたものばかり。
ようは、これは我々でもよくわかります。
オタク。しかも筋金入りの2次元オタクなんです。
そして、彼はそれで幸せだったのか?
それは幸せに浸っていると錯覚したフェイク人生そのものなのではないでしょうか。
本物の絵画、しかも垂涎ものの一品ばかりに囲まれたフェイク人生!
映画の中でも微妙な表現でしたが、ヴァージルはチェリーボーイでした老齢ですが。。そうだったのです。
おそらく、女性とデート経験ないのでしょう。血の通う人間が、それでいいわけがありません。
少し女性と触れ合うと、しかも純粋無垢で汚れていないと思われる女性クレア!
ヴァージルが求めためたものは、心を通わせることの出来たクレアのような女性であり、老年期になり初恋を経験出来て人生の中で何物にも代えがたい貴重な”事”の経験が彼の人生最後に色どりを与えたのだと思います。
同じく、人生で何が大事なのかあとから気が付いた映画に『恋愛小説家』とかもありますね。
ビリーが描いた特大の絵(策略) ネタバレあり
ビリー演ずる、悪役顔のドナルド・サザーランドが、出演していて、ただで済むわけは無いと思っていたら案の定でした。ここは出演者が悪役かどうかである程度、種の筋が見えるのはどの映画でも同じです。
そういう意味では、期待を外しませんでした。
ビリーが昔描いた絵を、ヴァージルが評価してくれなかった、見る目が無かったと
ビリーはヴァージルを責めます。ここでヴァージルはビリーを気が付いてあげてほしかった。
クレアに入れ込む、ヴァージルにはともに贋作者と鑑定人の盟友ですから、それ以上の関係にはなりえなかった。
残念なことです。
最終的には、ビリーは、ヴァージルに幸せをプレゼントしたのです。
名画よりもなによりも、何が大事なものなのか、価値があるのかを気がつかせてあげたのです。
ヴァージルは最後には、ラストシーンで満足していたに違いないと思います。
ここはタイトルにも皮肉が込められています。原題は”Request”でも”Client”でもなく
「Best Offer」
となっています。
これは、ヴァージルへの幸せの価値のオファーであると言うのは、あながち間違っていないと思います。
合わせて読みたい、名画を生み出したフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』
映画ラストシーン考察
本映画のラストシーンは、色々な考え方や見方が出来ると思います。
映画のラスト構成では順番として
1 精神病棟
2 ナイト&デイ (クレアが行ったことのあるレストラン)
と表現されていました。
これは捉え方によっては、2=>1の順番に見る人が多かったのではないかと思います。
映画構成レトリックとして順番を入れ替えて表現しているだけで、クレアを追いかけたけど会えずじまいで、最終的には精神病院に収監された。
ただ、”ほげる”的には、素直に
1=>2の順番(映像登場通り)
こう読み解いてもいいのではないかと思っています。
実はクレアに騙されて精神を病み、一時は心神喪失してしまうが、なんとか回復して二人の思い出(クレアと未来に行きたいと思っていたレストラン)の地へ向かってクレアとの思い出の幸せに浸る
このエンディング、これはこれで趣があって良いと思います。
エンディングには『不吉な招待状/インビテーション』のようなすっきりしないながらも方向性を与えたラストと、『ホース・ガール』Netflix配信のように視聴者に理解の全てを求めるタイプがあります。
本作は感覚的にラストのシーンで、考察が分かれることはあるともいますが、前者の方向性としては明確に出ているタイプの映画です。
ただ、ラストに考察が色々と考えられるのは、名画か駄作どちらかなんですよね本作は名画の類だと思っていますが、いささかモヤっとしたものは残ります。(『ノクターナル・アニマルズ』なんかもそうです)
海外の評価 2020/04時点
評価は、批評家・視聴者ともに、まま良い感じの数値ですね。ただもっと評価されてもいいと思う感じですね
Metascore (批評家) | 49 |
User rating | 7.8/10 |
TOMATOMETTER (批評家) | 55 |
Audience | 76 |
映画の感想まとめ
映画としては、機転が利いて飽きることなくラストまで見ることが出来ます。
序盤が少しスローですが、中盤から一気に畳みかけるように伏線の回収と話がつながり始めて、ラストは本当にドキドキします。
まさか~そーきたかーと言った感じですね。
もの凄く斬新で面白かったです
かなりネタバレしてしまったが、皆様へおすすめできる最高の一本です。
賛否両論ありますでしょうか、
”ほげる”的には、本映画は超おすすめの一本です。
✔ジェフリー・ラッシュの名演技を見たい
✔騙されたい人
✔名画に飢えている人
独善的評価[5段階]としては
映像・音楽 4
キャスト 5
ストーリー構成 4
初見で読み取れない謎 5
いつも通り、この映画の評価も毎度同じでが、 基本どんな映画でも大好きな”ほげる”としては、最高に面白い作品と思います。
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